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アメリカの障害者への教育についてお話を聞くため、Kristen McMaster氏を訪問しました。

彼女は、ミネソタ大学の特殊教育プログラム・コーディネーターです。

 

Kristen氏はテネシー州ヴァンダービルド大学で特殊教育を学びました。

数年間、高校にて様々な障害のある生徒へ指導をし、特殊教育テクノロジーで修士号を取得するため再びヴァンダービルド大学に戻ります。

研究を進めるなかで、Doug Fuchs教授と出会い、彼が行っていた学習障害や高等教育課題の研究に取り組むことに。

博士課程では、Peer Assisted Learning Strategies (PALS)というプログラムに力を注ぎました。

これは、一般教育において障害や学習で困難を抱えている生徒たちをサポートする個別指導プログラムです。

 

現在Kristen氏は、Curriculum-Based Measure (CBM)という障害のある生徒を分析する測定システム開発に取り組んでいるそうです。

またシステムを実際に使うの学校教員たちへのトレーニングも行っているとのこと。

これが上手く出来れば多くの生徒たちをサポートすることができます。

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インタビューの中で、彼女からLeast Restrictive Environment (LRE)を教えていただきました。

(日本語では「最小制約環境」などと訳されています)

 

アメリカの特殊教育法では、障害のある生徒に「無償での適切な公共教育」が与えられる事が約束されています。

LREというのは、障害のある生徒に対して、障害のない生徒と限りなく同じ学習環境をつくり、そこで必要なサポートも提供するという考え方です。

つまり障害の有無にかかわらず、一緒に一般クラスでの学ぶ機会が与えられているのです。

特に身体障害(多くは聴覚障害、視覚障害)のある生徒たちは、一般クラスで必要なサポートを受けながら通常の授業を受け、学業で成功を収めています。

しかし、学業に大きく影響を与える学習障害やその他の障害がある生徒にとっては、一般クラスで学ぶ環境が難しいこともあります。

教員がそのサポートに費やす時間がなかったり、生徒が必要としている特定のスキルを教える知識がない場合があるからです。

 
 
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このブログでも何回か日本の教育課題について書いていますが、特別支援学級や養護学校などに通っている生徒は沢山います。

先日、このLREについて障害児教育の研究をしている日本人教授に質問をしたところ、LREをアメリカから日本に紹介している教授は何人かいたそう。

でもそこまで広まらなかったとのこと。

広まらなかった原因は何だったのでしょうか?

LREの考え方で、日本でもインクルーシブな学習環境をもっと作ることができるのでは?と感じます。

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Kristen氏は、学習障害のある生徒が抱える課題についても教えてくれました。

アメリカで義務教育である高校を卒業した後、大学へ進む生徒もいるそうですが、高校を中退する生徒が実はかなり多いというのです。

高校中退でも仕事を見つけることはできます。

しかしその学歴がネックになり、高等教育を受けた他の求職者との雇用競争に勝ち、キャリアを築くのは大変難しいです。

それはつまり、他の人と同じくらいお金を稼ぐことも難しくなるということです。

貧困家庭の学習障害者だと、高校中退する確率または高等教育へは進まない確率が更に上がる、と言われていました。

 

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現在、学習障害は多くの人が抱えている障害の1つになっています。

これは日本でも同じ状況で、目に見えないため気付かれにくいですが、1クラスに2~3名は学習障害と含む発達障害者がいると言われています。

私たちは、このような生徒たちがきちんと勉強を続けられる方法を見つけ出し、他の生徒たちと同じように社会に入っていける環境を作る必要があります。

Kristen氏は、早期介入がとても重要だとおっしゃっていました。

 

将来、この社会を支えてくれる子供達をサポートできるのは家族だけではありません。

学校や地域、そして社会全体が関わることで、より良い環境を作っていけるのではないでしょうか?

 
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