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ミネソタ大学内にある全国教育成果センター(National Center on Education Outcomes =NCEO)を訪問しました。

障害のある生徒の教育成果を評価するため、1990年に設立された研究機関です。  

 

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(左から Sheryl Lazarus氏, Martha Thurlow氏, Laurene Christensen氏, Vitaliy Shyyan氏)

今回取材を受けてくださったのは、ディレクターのMartha Thurlow氏、シニア研究員のSheryl Lazarus氏、研究員のLaurene Christensen氏とVitaliy Shyyan氏です。  

 

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アメリカの学校でも昔は、障害のある生徒と障害のない生徒は完全に分けられて教育を受けていました。

障害者への教育資金が増加していくなかで、本当に必要な成果が得られているかということははっきり調べられていませんでした。

資金を使うだけでなく、きちんと成果も出すことが重要であるという考えからNCEOは設立されました。  

NCEOが注力しているのは、障害のある生徒に、より対応可能な教授法と評価方法の確立です。

”障害のある生徒”の中には、身体や知的の障害者だけでなく、英語が母国語ではない生徒(English language learners = ELLs)、または身体・知的などの障害+母国語が英語ではない生徒も含まれます。

NCEOでは、このような生徒たちに対して、多くの研究を実施し、トレーニングやサービスも提供しています。  

 

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取り組みは大きく3つに分けられます。

  1. Knowledge Development:

    関連情報の分析・集約を行い、出版物として発表したり、州や関連部門が使用するリソースとして提供する。

  2. Technical Assistance::

    州が政策を実行する際に技術支援を行う。

  3. Leadership and Coordination:

    NCEOの取り組み・ツール・サービスを知ってもらうため評価活動を行い、提携先との関係構築や協働企画を行う。

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日本で私が経験した学校生活や教育について話をしたところ、アメリカでの教育課題も教えてくださいました。

 

まず最初の課題は、”障害者”が誰なのかということが理解されていないことです。

昔は、”障害者”という言葉からよく想像されていたのは知的障害者がほとんどでした。

そこからアメリカでは膨大な研究が行われ、知的障害者はたくさんいる障害者の中でほんの一部だということが分かったのです。

現在では様々な種類の障害者が特殊教育を受けています。  

 

2つ目の課題は、教師が障害のある生徒に対して高い期待を持っていないということです。

障害のない生徒と同じように”何かを達成できる”という期待が最初から無ければ、高い期待をもったり、教え方を気にする必要はありません。

もしこの状態が小学校から始まると、そのまま学業にも影響し、大学進学やキャリアを築く際にも大きく影響が出てきます。

障害のある生徒も、他の生徒と同じように期待されるべきなのです。  

 

3つ目の課題は、障害のある生徒がきちんと教育・評価を受けるために、利用できるサービスやサポートをそもそも知らない、またはそれらの情報にアクセスできない状態があるということです。

理想的なのは、教師が障害のある生徒への期待を下げるのではなく、彼らが学習する上で障害がネックにならないよう調整すること。

そうすることで、彼らは他の生徒と同じように知識を得ることができ、また期待されるレベルに達することもできるのです。  

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これらの課題を解決するべく、NCEOは評価方法の研究に力を入れてきました。

この研究によって、障害のある生徒への適切な教授法や必要なサポートについて更に注目されるようになったのです。  

また、NCEOはインクルーシブ教育をとても重要視されています。

障害のある生徒が義務教育である高校から大学に進む際、他の生徒と同じ教育を受けることができるだけでなく、周りからも同じ期待を持たれるからです。

またインクルーシブ教育では、小さいときから障害のある生徒と障害のない生徒が接する機会を作り、自然にサポートし合う関係を築くことができます。  

 

人は皆、平等に生まれてきます。そして人は皆、成功し社会の一員として役に立つ存在になるべきです。 ただ1人1人、異なる能力や障害を持って生まれてきただけなのです

 

という言葉がとても印象的でした。

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  文部科学省の調査によると、特別支援学級や養護学校に在籍する生徒数はこの10年でおよそ2倍に増えているそうです(小学校~中学校)。

なぜ在籍生徒数が増えているのでしょうか?

私が考える理由の1つは、障害のある子供を普通学級に入れることで、からかわれたり、イジメに合ったりすることを両親が恐れているのではないかということです。  

 

NCEOから紹介いただいた動画を最後にご紹介します。

自閉症を持つアクセル君のストーリーです。

コミュニケーションに必要なデバイスを使いながら、普通学級で他の生徒といっしょに学び、

成長していく過程を見ることができます。

教師・両親・クラスメイトのサポートを得ながら、

障害のある生徒も普通学級で能力を伸ばせることをアクセル君が証明しています。  

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