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ニューヨーク州シラキュースに来て4ヶ月が経ちました。

ここでの生活で一番ありがたく感じているのは、やはり人との出会いです。

これまで知らなかった情報を得ることで、どんどん世界が広がっていく感覚があります。

 

Arlene Kanter Syracuse University
Arlene Kanter 教授

 

Arlene Kanter教授も私に影響を与えてくださった一人。

シラキュース大学でロースクールの”Disability Law and Policy Program (障害者法と政策プログラム)” 創設者であり、

現在、法学部生や大学院生を対象に障害者権利法・国際人権法のクラスを受け持っておられます。

 

このブログでは、これまでもADA (Americans with Disabilities Act = 障害を持つアメリカ人法)について何度か触れてきました。

この法律の登場によってアメリカの障害者の生活は大きく変わったのですが

ADA以外にも教育・雇用・コミュニケーション・住居・アクセシビリティにおいて

障害者の権利を守る法律がたくさん存在します。

「訴訟大国アメリカ」という言葉を聞いた事がある方も多いと思いますが、

障害者権利をきちんと機能させる手段として弁護士を雇い、違法者(団体)を訴えるというのはアメリカで一般的な手段のひとつとなっています。

しかしこのような訴訟問題は最後の判決が下るまで、かなり長い時間を要する場合があります。

 

Kanter教授は、過去に受け持ったケースについて話してくれました。

ある青年は学校から教育支援を拒否され、訴訟を起こしました。

彼に会った時すでに20歳。

しかしその訴訟が始まったものはは彼が14歳のときでした。

このような裁判は時間がかかり、子供たちが必要とする教育環境にすぐ対応できるというわけではありません。

しかし、学校側が支援することを拒否した場合、訴訟以外の方法がないのです。

 

現在、Kanter教授は個別のクライアント対応はしておらず

海外の政府機関、市民社会団体といっしょに各国の障害者権利や教育法の確立・強化に力を注いでいます。

 

Building

その例の1つとして、イスラエルでの取り組みを教えてくださいました。

建物のアクセシビリティを保障するためのプロセスなのですが、アメリカとは全く違う方法で行われています。

アメリカでは、ある建物がアクセスできない(違法な設計でつくられている)場合、訴訟を起こすことで法律にあった建物に作り直してもらうという流れです。

しかしイスラエルには、政府によってつくられたアクセシビリティ専門家を育成するプログラムがあります。

新しい建物が完成するとオープンする前に、そのプログラムを修了したアクセシビリティ専門家が建物を見に行きます。

イスラエルの法律に基づいた設計がなされているか確認を行い、すべて守られていれば認定を受け、正式にオープンすることができます。

しかし一部でも違法箇所があれば、その部分を改装するまで建物をオープンすることはできません。

 

アメリカでは、個人の住宅を除いて、新規の建物または改装される建物はADAのアクセシビリティ基準に沿った設計でなければなりません。

しかし、イスラエルのように専門的な誰かが事前に確認するというプロセスは現在ありません。

そのため建物がオープンしたあと、ADAの基準に合っていない部分が見つかった場合、誰かがそれを変えるために訴訟を起こす必要がでてくるのです。

つまり、誰かが裁判を起こすか、建物のオーナーが将来訴えられることを回避するために自ら改装しない限り、その建物は法律に違反したままということになります。

どちらにしても、一旦建てられた建築物を法律に合わせて改装するには時間とお金がかかってきます。

 

Kanter教授は、

法律はただ紙に書かれた文字にすぎません。

実際に使われるまで何の意味も果たさないのです。

とおっしゃっていました。

 

equal justice under law 

雇用の分野にしても、アメリカでは障害者を差別してはいけないということが法律で決まっていますが、いまだに差別は存在します。

障害者の失業率は健常者の失業率のおよそ2倍。

これも建物のアクセシビリティと同じで、障害者本人が「障害を理由に採用拒否された」と確信し、訴訟を起こさない限り何も変わらないのです。

 

wheelchair user moonrider 

日本の社会では訴訟を起こすということはアメリカほど一般的ではありません。

しかし、法律で決められている事と現実に起こっている事には大きなギャップがあります。

厚生労働省が昨年11月に発表した調査結果によると、障害者の法定雇用率*を達成している企業は47.2%でした。

法律で決められている雇用率にもかかわらず、半分以上の企業が障害者を十分に雇用せず

代わりに罰金を払っているのは何故なのでしょうか?

 

雇用主の中には、「罰金を支払うほうが簡単」と考えている人もいるでしょう。

しかし、その考えが変わらない限り、障害者の失業率を改善することはできません。

もし、彼らがまったく働く場所がなければ、政府から援助をもらい毎日を家で過ごすだけ。

それだけではなく、彼らの面倒を見るために親も外に出られなくなる、というケースも出てきます。 

特に日本は高齢社会が進んでおり、若い力が少なくなってきているという別の課題にも直面しています。

この社会を支える活力として、障害者も加わることができるのではないでしょうか? 

国全体の生産性や支出を考えれば、雇用主は罰金を払うのではなく、

障害者を雇用したほうが良い結果につながるのと私は考えます。

 

法律は社会をよくるために作られています。

その法律を私たちは重く受け止め、

たとえ困難な状況でも、きちんと守っていかなければなりません。

 

参考:

  • 日本の障害者の法定雇用率についてはこちらの記事に記載しています

http://moonrider7.com/2016/02/07/independent-living2/

 

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