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約1年前、私は東京で開催されたあるセミナーに参加し「DO-IT Japan」というプログラムについて話を聞きました。

DO-ITとはDisability(障害)、Opportunities(機会)、 Internetworking(インターネットワーキング)、Technology(テクノロジー)のそれぞれ頭文字をとったもので

障害のある生徒たちにテクノロジーを通して様々な機会を提供しているプログラムです。

もともとアメリカのワシントン大学で始まったプログラムということ聞いた私は、「アメリカに行ったらワシントン大学を訪問してみたいな」と考えていました。

 

そして2月にシアトルを訪問した際その思いが叶い、ワシントン大学にあるDO-ITのオフィスを訪問することができました!

インタビューさせていただいたのはSheryl Burgstahler氏(DO-ITプログラムの創設者・ディレクター)、Doug Hayman氏(テクノロジー・スペシャリスト)、 Debra Zawada氏(プログラム・コーディネーター)、Tami Tidwell氏(カウンセラー、コーディネーター)の4名です。

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DO-IT創設者のSheryl氏と

 

創設者Sheryl氏のキャリアは中学校の数学の教員としてスタートしました。

アメリカでは一般教育で障害のある生徒もたくさん学んでおり(*1)、Sheryl氏もこの仕事を通して彼らと接することが多かったと言います。

教員時代、彼女が感心を持ったのは”Assistive Technology(アシスティブ・テクノロジー、支援技術)”。

学校生活、職場など日常生活を送る上で、障害者をサポートする技術のことを言い、視覚障害へのスクリーンリーダーも例の一つです。

1984年、マッキントッシュが世に出てきて、ITが社会を変える時代がやってくることを感じたSheryl氏は、これまで学んできたこと、教員の経験、そしてITを生かして障害者と健常者のギャップを埋めたいと考えました。

 

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教員時代に特に感じていたのは、アメリカで義務教育である高校までの環境と、大学進学後の環境の違いだと言います。

義務教育までは障害のある生徒はIEP (Individual Education Plan) という個別の学習プラン、

または504プラン(リハビリテーション法に基づいた障害を持った生徒に対して、個別のニーズに応じた教育を行う計画。特別支援教育ではなく、通常の教育課程で行われる。)を通して、必要なサポートを受けられるようになっています。

生徒とその親は、学校生活で必要な合理的配慮やハード面・ソフト面のアクセスについて直接学校と話し合いを進めます。

障害の種類によって内容は異なりますが、エレベーターの設置、テストの時間延長、資料のフォーマットの変更などが例として挙げられます。

学校側はその依頼内容にそってに対応していくというプロセスです。

 

両親など周囲にいる大人に守られていることは大きな助けになりますが、

その環境のために障害者は自分で何かを決めて行動するという機会も奪われている状況があります。

また、大学へ進学するとその状況は一変。

高校までとは違い、担任の先生もいないので親が入ってきて交渉することはできません。

アメリカの各大学には、障害のある学生をサポートするオフィス(*2)がありますが、サポートしてもらいたい場合は、

生徒が自らコンタクトを取り、必要な書類を揃えて、何が必要かを伝える必要があるのです。

 

MoonRider7_Writing

Sheryl氏は、大学側からよくこんな意見を聞いたそうです。

「障害のある生徒は大学で学ぶための準備が十分にできていない」と。

それは学力の問題ではありません。

大学できちんと学べる環境をつくるために、自分には何が必要なのかを知らずに大学に入ってきているのです。

 

その原因の1つは、これまで周囲の大人(特に親)が多くのことを決めて、一方的に生徒へ与えてきたからでしょう。

多くの生徒は自分自身で調べたり、考えたり、誰かに依頼したことがないのです。

大学では、障害ある学生の情報は自動的に登録されませんし、目にみえる障害であってもそうでなくても、教授や職員から「サポートオフィスに行って、こんなアレンジをしてもらってね」と言ってもらえることはありません。

まずは学生が自分で動いて、自分で決める必要があるのです。まさに“It is all about yourself(あなた自身ですべてを行う)”な環境です。

ここに課題を感じたShery氏は、障害のある生徒たちが、義務教育から大学進学へうまく移行できるサポートをしたいと考えDO-ITを開始しました。

Part 2へ続く

 

*1  シラキュースの公立小学校を訪問したときのレポートです。アメリカと日本の学習環境は大きく異なります。

「アメリカの小学校訪問から見えた日本の教育課題」

アメリカの小学校訪問から見えた日本の教育課題

*2-1 アメリカの大学には障害のある学生をサポートする専用オフィスがあります。

こちらは現在私が所属するニューヨーク州シラキュース大学の Office of Disability Servicesのレポートです。

障害者本人ではなく、障害を感じさせる「環境」が問題である

 

*2-2 こちらは私が学生時代に通っていたウィスコンシン州立大学リバーフォールズ校のStudent Ability Service です。

州や学校の規模によっても学生へのサービス内容は異なります。

「障害」の支援から「能力」の支援へ ~UWRF訪問~

 

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