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*** Part 1はこちら ***

MoonRider7_DO-IT
DO-ITでカウンセラー&コーディネーターを務めるTami氏と

 

DO-ITの中で特に注目すべきプログラムは、「スカラーズ・プログラム」。

ワシントン州にある高校に通う障害のある生徒、2年生・3年生(アメリカの高校は4年制)を対象としています。

スカラー(研修生)として選ばれた生徒は、年間を通して大学生活について学びます。

ルームメイトと寮生活したり、食事の際に使うお金の入ったカードを管理できるか確認したり、

混雑した食堂で列に並び、テーブルまで運べるかを実践するなど、

大学生活を実際に体験するのです。

その上で、サポートがないと難しいということに気づけば、どんなサポートが必要なのかを考えていきます。

そして大学の職員へどうやって伝えたら良いのか、ということも実際にチャレンジします。

 

スカラーズ・プログラムのポイントは、創設された1993年から研修生がインターネットで繋がり、いつでも情報交換できる仕組みを作っていたということ。

今でこそインターネットは生活の一部になっていますが、1993年の当時、高校生で日常的にインターネットを使っている人はいませんでした。

そういう点から見てもこのプログラムはとても革新的だったんですね。

 

またDO-ITでは、パソコンや障害者も利用しやすいハードウェア・ソフトウェアなどを長期的に研修生へ貸し出しています。

これにより学校や自宅など場所を選ばず各自が能力を伸ばしていける環境を作っています。

 

MoonRider_Positive

 

Sheryl氏は、こんな事を言われていました。

DO-ITというものがなくても次々にポジティブなことが起こり、良い方向に社会が進んで行くきっかけを作る、それが私たちDO-ITの役割です。

子供達は互いに支え合うことはできますが、そのきっかけを作る人が必要です。

例えば、視覚障害の子供が自閉症の子供と接する機会は日常的にあるものではないでしょう。

だからまず接するきっかけが必要なんです。

障害者のリーダーというのは突然現れるものではありません。

様々な経験を経てリーダーになっていくのです。

DO-ITのプログラムを通して、社会のリーダーになっていく人を育てていきたいと私は考えています。

 

DO-ITは障害のある生徒へ1から10まで必要なことを教えるのではありません。

あくまでも生徒自身が自分に必要なものに気づき、それを相手に伝えられる能力を身につける”きっかけ”を作っているのです。

またスカラーズ・プログラムの研修生は障害の種類も様々。

自分以外の障害を持った人と接することで、「自分はこの部分は苦手だけど、この部分では誰かを助けることができるんだ」と気づく機会にもなっているそうです。

 

MoonRider7_Dance

話を伺うなかで、アメリカらしい面白い取り組みがありました。

なんと!夏のプログラムの最終日にダンスパーティをするというのです。

日本では一般的ではないですが、アメリカではプロムなど学生たちがドレスアップしてダンスパーティに行くイベントがあります。

ダンスパーティ自体が人生ですごく重要なこというわけではないですが、DO-ITでは普通の生徒が経験することを障害のある生徒にも同じように経験してほしいと考えているそう。

ただ楽しい経験をしてほしいという目的だけではありません。

ダンスパーティの会場や雰囲気は居心地が悪いと感じる人もいるでしょう。

しかし、自分が嫌だと感じる環境というのも経験すべきと考えてこのイベントを開催しているといいます。

会場にはDJや音楽、そして学生たちが大好きなピザも準備。

ダンスや音楽を楽しむ人もいれば、中には人前でダンスするのはちょっと恥ずかしいという人もいます。

そういう人には周りにいる人のサポート役にまわってもらうなど、なるべくその環境に馴染めるようDO-ITの事務局でサポートするそうです。

 

MoonRider7_SelfAdvocacy

障害者が自分に必要なものや困っていることを理解し、自分自身で思いを伝えていくことを、英語で「セルフ・アドボカシー」と言います。

アドボカシー(Advocacy)は「支援」「擁護」「代弁」などの意味。

アメリカでは自分の意見を持ち、主張することが良しとされている社会です。

子供達は家庭や学校で自然にセルフ・アドボカシーを学んでいきますが、障害児には大人が介入しすぎて、本人が直接セルフ・アドボカシーを学ぶ機会が少なくなってしまいます。

日本の社会はアメリカとは異なり、集団意識が高く協調性を大切にしていますが、障害児へ大人が介入しすぎてしまう傾向は似ています。

以前、別のサイトで「障害のある子供を過保護にしないで(*1)」という記事を書きました。

タイトルの通り、大人が過保護にすることで障害児のセルフ・アドボカシーに大きく影響を与えてしまうと私は考えています。

健常の子供が普通に経験することを、同じように経験させることはすごく意味があります。

「失敗したらどうしよう」「子供が酷い目にあったらどうしよう」と親は心配してしまうもの。

しかし、親が安全な道を作ることで子供は自分で試す機会を失い、できることを増やすことができず、自信をつけることもできません。

できる事を増やすには自分でやってみるしかないのです。

 

MoonRider7_Mizuki_Wheelchair

私は2歳から足に障害があります。

両親は普通の子供が経験することを同じように経験させてくれたので、自分はセルフ・アドボカシーが十分あると思っていました。

しかし、シラキュースに来て「やっぱりアメリカは違うな」と感じたことがあったんです。

 

シラキュース大学のキャンパスは坂道が多く、手動車イスでの移動は結構ハードな環境です。

そこで私は電動車イスのレンタルできるところを教えてほしいと大学に相談しました。

私は現在学生ではなく、スタッフ扱いになっているので障害のある職員をサポートするオフィス(*2)にメールを送りました。

すぐに返事があったので少し驚きながらメールを開けると、

「以下がシラキュース市内にある福祉機器の店舗一覧です。」

 

「・・・・・あ!自分で連絡しろってことか!」

と数秒考えてわかりました。

日本の大学には同様のオフィス(障害者を専門にサポートするオフィス)はないので比較できません。

が、こういう相談が来たら大学側がまず店舗に連絡して、ある程度情報を得てから

「ココとココなら電動車イスがレンタルできるそうです。」という返事をくれるだろうと日本人の私は想像していました。

アメリカでは外国人でも障害者でもまず自分でやる。そのあと問題が出てきたら改めて相談する。

私のセルフ・アドボカシーはまだまだ甘かったようです。。。

 

Part 3へ続く

*1 「障害のある子供を過保護にしないで」の記事は以下から読むことができます

【お知らせ】ライターとして記事を書くことになりました! / New Challenge, Writer!

 

*2 シラキュース大学には障害のある職員をサポートするオフィス「Equal Opportunity, Inclusion and Resolution Services」があります。インタビュー記事は以下から読むことができます

障害者従業員の合理的配慮は職場全体で対応する

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