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現在の研究のスポンサーが決まったとき、最初にアプローチしたのは企業でした。

研究テーマが障害者”雇用”だったので、1年間企業でインターンとして働きながら研究ができないかと考えたのです。

80社以上の米系企業にコンタクトをとりましたが、残念ながら全滅。

しかし、いくつかの企業は「長期間のインターンは難しいですが、ぜひ訪問に来てください」と言ってくださいました。

 

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ミネソタではその中の1社、医療系グローバルカンパニーのMedtronicを訪問しました。

従業員およそ87,000人。

ダイバーシティに力を入れている企業として表彰もされています。

参考:The 2014 DIVERSITYINC TOP 50 Companies for Diversity

http://www.diversityinc.com/medtronic/

 

今回、人材能力開発を担当しているMara Thompson氏にインタビューする機会をいただきました。

 
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まず採用のプロセスについて。

オンラインに募集要項が掲載されており、そこから申請する場合、障害の有無・退役軍人か否か・民族的多様性(ethnically diverse)の有無について問われます。

それらの質問に対して、自分の状態を公開するか否かは応募者が選択できます。

アメリカでは、仕事のポジション毎にはっきりとした業務内容が決められており、そこには必要な学歴と、特定のフィールドでの就労経験(例:人事分野で3年以上の業務経験があること)も記載されています。

その仕事に応募するには、障害の有無にかかわらず、記載された必須条件にマッチしなければなりません。

必須条件にマッチしていない人はこのポジションに相応しくないと考え、面接をする必要はないと考えられます。

重要なことは、応募者が条件に合う経験とスキルを持っていて、その仕事ができるかどうかということ。

障害があるかどうかは関係ありません。

必要なものが揃っていれば、その仕事ができると判断します。

とMara氏。

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オンラインで仕事に応募する際、障害の有無について問われるものの、面接官にはどの応募者に障害が有るか無いかという情報は共有されていません。

面接中、例え応募者が見た目ですぐわかる障害(例:車椅子ユーザー)を持っていたとしても、面接官は障害について質問をすることはありません。

応募者の障害の有無を判断することは、私たちの仕事ではありません。

面接に来た全応募者において、仕事に必要な条件を満たしているかどうかを確認すること、それが私たちの仕事です。

ある特定の人には障害の有無について質問をし、その他の人にはこの質問をしないというのは不公平であり、正しいことではありません。

と、Mara氏は説明されました。

採用後、文書にて改めて障害の有無やその他のバックグラウンドについて問われます。

しかしその時も、障害を公開するかどうかは本人次第。

職場での合理的配慮は、障害を公開し必要なものを本人から要求した場合に提供されます。

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この採用プロセスは日本と違うところも多く、大変興味深かったです。

私たち(日本の障害者)が仕事に応募する際、通常障害者手帳のコピーを提出します。

これが障害の公開になります。

面接時の質問では、この仕事でどんなことが出来るかだけでなく、どんな合理的配慮が必要かも問われます。

しかしこの時点では、まだ採用が決まったわけではありません。

そのため100%正直に、何が必要か伝えにくい状況があります。

例え必要でも、条件が多かったり費用が掛かるモノだと、それを理由に不採用になることを恐れてしまうからです。

採用が決まったとしても予算がないなどの理由で、合理的配慮を提供しない会社もあります。

障害者従業員のサポートが重要視されていないという悲しい現状です。

また、日本の雇用では障害者雇用率を使っており、募集が始まる時から「一般採用枠」と「障害者採用枠」というように分けられています。(全ての企業ではありません)

多くのケースにおいて、「障害者採用枠」の職種はかなり限定されており、仕事に必要な条件も一般的だったり曖昧だったり。

プロシェッショナルなスキルや経験を期待していないことが感じられます。

アメリカの雇用の視点でみると、これは完全な差別だと感じます。

しかし、日本の企業がアメリカと同じように細かい条件を設定してしまうと、誰も応募できない(それに似合うスキルセットをもった障害者が圧倒的に少ない)という状況になり、法律で決められた雇用率を達成することは困難でしょう。

このように、障害者雇用に関して解決しなければならない課題は山積みです。

日本のこの現状は雇用主と従業員、両者にとって良くないと私は考えています。

でも、アメリカの雇用方法をそのまま取り入れることが最善策とも考えていません。

何か日本のマーケットに合うものを考えなければなりません。

いますぐに答えはありませんが、今後アメリカでの企業訪問を続け、アイデアを探し続けます。

最後にMara氏から皆さんへのメッセージです。

 
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Medtronicの経営陣にとって、ダイバーシティ&インクルージョンはとても重要視されています。社長のOmar Ishrakは、職場でのあらゆるダイバーシティに価値があると考えています。社内には従業員によって作られた”リソース・グループ”がたくさんあり、宗教や文化に関するものだけでなく、障害者や退役軍人のグループもあります。それぞれのダイバーシティの理解向上を目指して、共通の思いをもった従業員が集まり、社内でイベントを企画しています。

雇用目線から言うと、多様なバックグラウンドを持った人材の採用に非常に力を入れています。そうすることで、社内のダイバーシティの考えを促進できますし、ダイバーシティの考えから素晴らしいアイデアを作り出す能力を育てる事ができます。その素晴らしいアイデアが、この会社を正しい方向に導いてくれると我々は信じています。

 
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