This article is also available in: English

ワシントンDCでは政府機関も訪問することができました。

まずは、アメリカ合衆国労働省のなかにある障害者雇用政策局(Office of Disability Employment Policy=以下、ODEP)。

障害者の雇用数とその質を向上するために必要な制度や施策を作っている場所です。

ODEPでは3名の方にインタビューさせていただきました。

まずご紹介したいのが、副次官補のジェニファー・シーヒー氏です。

MoonRider_JenniferSheehy_ODEP
ODEPのオフィスにてジェニファー氏と一緒に。後ろにはオバマ大統領の写真も!

 

ジェニファー氏は元々グローバルホテルチェーンのマリオット・インターナショナルにて飲食部門のマーケティングの仕事をしていました。

キャリアを築く中でビジネススクールに通うことになったのですが、その際に脊髄損傷を負い車イス生活に。

この劇的な生活の変化によって、「障害者の就労」に興味をもち始めました。

それから20年以上、障害団体やホワイトハウスを含む政府機関にて障害者雇用の促進に力を注いでいます。

 

アメリカの障害者雇用についてジェニファー氏は、雇用主が障害者を採用し、昇進させることに価値を見出すことが重要だと教えてくれました。

障害者を雇用差別から守る厳しい法律や制度があっても、雇用主が障害者に対する先入観を持っていると先進的な障害者雇用がしにくくなります。

また社内のプログラムのアクセシビリティも課題の1つとして挙げられていました。

例えば、社内研修は障害者従業員も同じように参加し、学ぶことができるよう設備・資料に配慮が必要です。

アメリカの教育制度と同じように、障害者もメインストリーム(一般的な環境)へアクセスできることはとても重要。

そうすることで彼らもスキルを身につけることができ、昇進や仕事の幅の拡大など健常者と同じ機会を得て活躍していくことができます。

 

これは日本の就労環境でも同じ課題ではないでしょうか?

障害があるというだけで、最初から労働力を低くみて仕事の量や種類を制限している雇用主は珍しくありません。

また職場でのアクセシビリティや配慮が不十分なために、障害者のなかには受けるべき研修を受けることができず、長年同じ仕事をしても昇進できない人がいます。

キャリアアップのために転職しようとしても、エントリーレベルからの再スタートになってしまうことも。

これは同じ分野で同じ年数働いた健常者と差ができているためです。

障害者雇用というのは法律で決められた雇用率(*1) をクリアすればそれで終わりではありません。

健常者を雇用するのと同じように、障害者の能力やポテンシャルを見抜き、育てて活用していくべきです。

そうすることで障害者も仕事への意欲が湧き、パフォーマンスも向上します。

障害者ならではの視点をビジネスに活かすこともでき、会社にとっても利益が得られます。

 

IMG_5232

 

障害者もいっしょに働ける就労環境を作るための要素についてジェニファー氏に質問すると、以下のように答えられました。

「経営層が障害に対しての理解を示すこと、また企業文化としてダイバーシティへの理解を高めることが必要。

経営層のなかに障害のある当事者がいれば、その人が自分の話することできます。

これはインクルーシブな企業文化を作るためにとても強い力になります。

また雇用プロセス、合理的配慮の提供方法、従業員による障害者グループの活動(*2)、会社の公式サイトのアクセシビリティ、従業員への福利厚生などの制度がしっかりと確立されていることも大切です。」

 

この言葉を聞いたとき、ふと思い出したのはユニクロで有名なファーストリテイリング。

私はアメリカで現在の研究を始める前、東京にある同業のアパレル企業に勤めていました。

業務で他企業を訪問してヒアリングすることも時々あり、その中の1社がファーストリテイリングでした。

小売業では従業員の大多数が店舗勤務になり、そのため「障害者を店舗で採用するのは難しい」と考える雇用主は多いです。

日本ではまだ接客業=障害者がする仕事と考えている雇用主は少ない現状があり、またバックルームは商品であふれ、自由に動ける範囲は限られます。

その狭い範囲でスピーディかつ正確に働く必要があり、サポートや配慮が必要なイメージが強い障害者は敬遠されてしまうのです。

しかしファーストリテイルングでは、柳井社長が直々に「1店舗1名以上の目標」と発表し、障害者の店舗雇用を2001年からスタートしました。

現在では9割以上の店舗で達成しており、2年前にヒアリングをした際、障害者で店長にまでなっている人もいると伺いました。

そんなファーストリテイリングは、日本だけでなく海外進出も成功しています。

多様な人が一緒に働ける環境を作ることは、国を超えて多様な人に合う商品やサービスを提供できるということにもつながっているんですね。

 

MoonRider_Job

 

最後に、ジェニファー氏から「National Disability Employment Awareness Month」について教えていただきました。

アメリカでは毎年10月を障害者雇用理解向上月間としているそうで、なんと1945年から続いてるんです!

今年は雇用主が #InclusionWorks を使ってSNSで自社の取り組みをシェアしていくキャンペーンを実施するとのこと。

ODEPのサイトにはこの期間用に作られたポスターなどの素材がアップされていて、雇用主は自由にダウンロード可能。

自社のロゴを入れて社内外で使用することができます。

日本では毎年9月が障害者雇用理解向上月間になっているようです。

より多くの人に障害者雇用の課題を知ってもらうために、ODEPのようなSNSを使った取り組みはとても効果的だと感じました。

 

最後に、TimeWarnerというインターネット・ケーブル会社がこのNational Disability Employment Awareness Monthのために作った動画がありますので、ぜひご覧ください!(英語のみ)

 

 

*1 日本では障害者雇用に法定雇用率を設定しています。一般企業であれば50名以上従業員が在籍する場合、2%以上の障害者を雇用しなければならないと法律で決められています。

*2 アメリカの大手企業は、従業員がボランティアベースで活動するグループが存在します。障害者・女性・LGBT・アジアンアメリカンなどダイバーシティの理解向上を目的に活動されているところが多いです。

これまで訪問したCisco・スターバックス・マイクロソフトでも同様のグループがありました。それぞれの訪問レポートは以下からチェックしてください。

業務時間の”ボランティア活動”が企業を更に強くする ~Cisco訪問 前編~

米スターバックスに聞いた!障害者が活躍する職場環境とは? ~Part 1~

社会に変化を創り出すには、一人ひとりの「違い」を活用せよ ~マイクロソフト訪問 Part 2~

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です