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ダスキン愛の輪基金の研修生として選ばれた1年半前、事前研修でアメリカの障害者権利運動の話を聞きました。

私は大学時代をアメリカで過ごし、車イスでの過ごしやすい環境や障害者がアクティブに地域社会で生活していることは知っていたのですが、恥ずかしながらその環境ができるまでの歴史的背景については全く知りませんでした。

今回ワシントンDCでは、障害者権利運動のキーパーソンの1人であるジュディ・ヒューマン氏とお会いしました。

彼女は現在、アメリカ合衆国国務省にて国際障害者の権利に関する特別顧問として活躍されています。

 

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ジュディ・ヒューマン氏といっしょに

ニューヨーク出身のジュディ氏は1歳半のときにポリオにかかり、そこから車イス生活になりました。

アメリカは今でこそ障害のある生徒も一般教育を受けられる環境がありますが、現在68歳の彼女が過ごした時期は教育制度もいまと全く異なります。

車イスを理由に入学を拒否されたり、大学でも寮に入ることを拒否されました。

ジュディ氏の両親は強いアドボケートとなり、同じく障害者の教育権利を求める十数万人とともに活動を起こしました。

この大きな行動によって、ジュディ氏は必要な教育を受けることができたのです。

彼女が社会的に有名になったのは教員試験を受けたとき。

筆記と口述試験は合格したものの、身体検査で不合格でした。

彼女はこの結果に納得できず、ニューヨーク市の教育委員会を相手に訴訟を起こし見事勝利。

教員免許を得て、ニューヨーク市で初めての車イスの教員になりました。

 

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転機になったのは1972年、ジュディ氏が初めてアメリカを出てドイツへ行ったときのことでした。

アメリカにも共通する障害者への差別を見た彼女は気付きました。

「国によってそれぞれ状況は違っても、雇用・教育・住居など同じような課題をもっている」と。

その発見から、彼女は国際的な分野で仕事をしようと決意。

これまで23年間、世界銀行やアメリカ政府機関などで仕事をしています。

 

この仕事を選んだ理由について聞くと、

挑戦することが好きで、賢い人たちと共に働きたいという思いがあった。また課題のオーナーシップを握れることも魅力。

と教えてくださいました。

現職では、国務省や米国大使館・領事館で働く職員に各地で発生している障害者の人権侵害についてしっかり理解してもらうこと、また障害者に関する内容を各国の制度や外交にも取り入れてもらうために様々な活動を行っています。

海外で働いているアメリカ人は、いま現在アメリカで起こっていることを必ずしもフォローしている訳ではありません。強い市民社会の重要性を教育することは私の大切な仕事。国によって政府がNGOを持つことを制限しているところもあります。障害者の権利を守るためには強い障害者コミュニティが必要不可欠であり、そのために、私は多くの人たちと共に制度や法律を作ろうと戦ってきました。

と、ジュディ氏。

 

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私は研究テーマである障害者雇用についてもいくつかの質問をしました。

そのうちの1つは、「障害者もいっしょに平等に働ける就労環境に必要なものは何か?」

 

ジュディ氏の答えは、

まずは作業所など障害者だけを集めた職場をなくすことです。アメリカでは障害者の失業率は高いですが、働いている人のほとんどは健常者が大部分を占める一般就労環境で働いています。障害者もきちんと教育を受ける事で将来的にできる仕事のキャパシティも変わってきますので、教育はとても重要です。

そして、管理職層をトレーニングすること。彼らが従業員1人1人の違いを尊重して、一緒に働くことの強みをきちんと理解している必要があります。障害者も職場の”一員”になっていなければなりません。いっしょに働くことで新しい気づきも増えます。そこから企業はよりよいサービス・商品をお客様に提供できるでしょう。

最後に法律がきちんと機能されていること。たくさん障害者を守る法律があっても、知られていない、使われていないでは意味がありません。

アメリカには障害者の作業所がありますが、州によって完全廃止に向けて動いているところもあります。

これは、どんな障害者でも必要な配慮があれば一般就労環境で競争雇用(=最低賃金以上を稼ぐことが)できるという考えが基になっています。

現在、障害者が集められた作業所では、多くの人が最低賃金以下で働いています。

また一度作業所に入るとほとんどの障害者がそのまま作業所に居つづけ、一般就労環境に移行しないというデータも出ています。

このままでは障害者が仕事のスキルアップをしていくこと、経済的にも自立することが難しくなり国の負担も大きくなってしまいます。

そこでアメリカ政府は補助付き雇用やカスタム雇用など、障害者が持っている能力を活かしながら一般就労環境で働ける施策を打ち出しています。

(補助付き雇用やカスタム雇用については、労働省の方に取材をした際に話を伺いましたので、そのインタビュー記事で紹介します。)

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日本にも障害者を集めた職場はありますね。

作業所もありますし、大企業のグループ下に設立された特例子会社もあります。

一般就労環境に比べて、これらの職場では仕事の量や質の差、給与の差が確実に存在しています。

雇用主の中には障害者を集めて働いてもらう方がマネジメントしやすい、障害者の中には理解のある環境で働いた方が安心と思っている人もいるのではないでしょうか。

私はこの働き方が100%悪いとは言いません。

というのは、このような場所があるからこそ仕事に就けている障害者もいるからです。

 

ただこのような障害者が集められた環境で仕事をすることで、高度な仕事のスキルが身につけにくい、様々なキャリア構築の機会や経験を得る事が難しい状況があります。

障害者を集めた職場=仕事をするために必要な経験・スキルを得るための場所であれば、存在する価値はとても大きいです。

そこから一般就労環境へ移行できる人、キャリアアップを目指す障害者を増やしていけば、障害者本人に取っても雇用主にとっても、国にとってもベネフィットがあります。

実現するには雇用主の意識改革と障害者本人の意識改革が必要です。

これまで日本が行ってきた障害者を守る雇用から、障害者の能力を育て、障害者を活かす雇用へのシフト。

私はこれを実現したいです。

 

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女性障害者として国際的に活躍しているジュディ氏。

この世界では女性であるだけでも不利な立場になることは多いですが、そこに障害も加わると同等に見られず、多くの課題も出てきます。

多くの人は障害のない状態で生まれてきますが、精神・身体に障害があることで暴力や被害を受ける可能性は高くなります。女性障害者の性被害の高さも深刻です。すべての女性がサポートし合うことが大切。私は自分自身でいること、強い意志をもったパワフル・スピーカー&リーダーでいることが重要と考えています。

と、ジュディ氏。

 

私はアメリカで研究を始めるまで女性の自分、障害者の自分と分けて考えることはあっても、「女性+障害者」と合わせて深く考えることはありませんでした。

企業や障害者アドボケートを訪問し、会議に出席する中で、頻繁にこの言葉を耳にして自分と重ねてることが増えたように思います。

女性障害者は社会的に弱い立場にありますが、だからこそ私たちの意見や思いを伝えていかなければいけません。

当事者だからこそ伝えられることがたくさんあるはずです。

 

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最後にジュディ氏に理想の社会について伺いました。

年齢・宗教・障害・性別などの違いで区別せず、お互いを尊敬する平和な社会。そして、すべての人が”Equality(平等)”に価値を感じている社会。例えば、アクセシビリティだと建物がバリアフリーということだけでなく、誰でも情報にアクセスできるようになっていること、職場だと必要なサポートを受け、きちんと仕事ができる環境にアクセスできることですね。

 

ジュディ氏とお会いすることは、このアメリカでの研究中に達成したい大きな目標の1つでした。

彼女は私のスポンサー、ダスキン愛の輪基金の研修生と35年以上の親交があり、過去に来日もされています。

彼女の仕事について伺うことで、国内外で障害者権利について精力的に活動されていることがわかりました。

ジュディ氏が多くの人から愛される理由、それは彼女自身が小さい時から様々な差別や偏見を経験し、そこで戦ってきた背景があるから

彼女の言葉には重みと説得力があるからこそ、多くの人の心に届くのだと思います。

障害者の環境を変えるには、障害者自身がアクションを起こしていくことが重要なのだと改めて実感した取材でした。

ジュディ・ヒューマン氏、どうもありがとうございました!

 

最後に、先月「知っておくべき10名の女性障害者」という記事が話題になりました。ジュディ・ヒューマン氏もその中の1人として掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください!

10 Badass Disabled Women You Should Know About (英語のみ)

http://www.autostraddle.com/10-badass-disabled-women-you-should-know-about-346192/

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