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シラキュースにあるJowonio Schoolは非営利のPreschool (日本でいう幼稚園)で、1969年にシラキュース大学の教育学部が設立しました。
ダイバーシティ&インクルージョンを重要視した運営が行われているアメリカでも珍しいPreschoolです。
肌や目の色の違いはもちろん、母国語の違いや障害のある子供が一緒のクラスで学んでいます。
全校生徒数は約170人。
その中で障害のある子供はなんと68名もいます。運動機能障害(車椅子など)、ダウン症、聴覚障害など障害の種類も様々です。
バックグラウンドが異なる子供たちが、どうして一緒に学べるのか不思議ですよね。この学校で感じたことは以下の5点です。
1. 教員の数が多い
1つのクラスに複数人の教員がいます。
障害のある子供はIEP (Individual Education Plan)という個別の教育プランを持っており、マンツーマンでの対応が必要な生徒には個別の担当教員が付いています。
また英語が母国語ではない子供に対しては、視覚や聴覚などの教授法を用いて1人1人がより理解できるよう細かい対応をしています。
2.「違い」を知って認め合う環境
教室ごとに内装がガラッと異なります。
そこにはクラスメイトの肌の色の違い、話す言葉の違いなどが分かるの掲示物もあります。
中には手話の表も!
小さい子供でも簡単な手話表現ができるそうです。
3. 個々の特性を伸ばす教室づくり
触る、見る、聞くなど子供の好奇心を育てる工夫がたくさん。
1つの教室の中に、料理・パソコン・物を売る・買うの擬似体験ができるコーナーなどもありました。
1日中クラス全体で同じ事をする訳ではないので、個々が興味や能力に合わせて学べる環境になっています。
4. 充実したセラピーサービス
作業療法士・言語聴覚士・理学療法士が在籍しています。
こちらもIEPに沿って、必要な子供たちへセラピーサービスが提供されています。
日本の病院にあるリハビリ室のような部屋が校内にあり、障害のある子供が体を動かせる専用器具も設置されていました。
5. 保護者やコミュニティのサポート
ボランティアで保護者が様々な学校イベントに協力しています。
他にも家庭で不要になった衣類やおもちゃを提供しているコーナーがありました。
また近所のパン屋さんが学校へ大量のパンを寄付しているところも見かけました。
直接学校に関わる保護者だけでなく、コミュニティ全体で学校をサポートしている様子が伺えました。
ハード面では、車イス用のスロープ、エレベーター、トイレ、ボタン1つで開閉する自動ドアがあります。
学校の備品に”Kidwalk”というものもありました。
自立歩行が困難な子供たちが室内・屋外で体を動かすことができます。
車イスと違って足が動かせること、ハンズフリーデザインなので自分の手で何かを触って感じるという経験ができるそうです。
Ellen 校長からのメッセージ
この学校には様々な国や文化を持った生徒たちが在籍しています。
教師自らが良いモデルとなって、尊敬の心と正しいマナーで生徒1人1人に接するようにしています。
生徒たちも最初は少し不安を感じるかもしれませんが、時間をかけて他のクラスメイトとどうコミュニケーションをとっていけば良いか学んでいきます。
この学校だけでなく、アメリカには様々なバックグラウンドを持った人が一緒に生活している、まさに多様性にあふれた国です。
子供達にはすべての人をポジティブな気持ちで受け入れられる大人になってほしいと考えています。
子供は大人を見て育つとよく言います。
身近にいる大人の行動を子供は真似します。
日本では、小さいときから障害のある子供・障害のない子供が分けられる傾向や、障害を話題にすることがタブーな風潮など、大人が作り上げた環境が子供達にも大きく影響していると思います。
Jowonio Schoolのような場所を簡単につくることは難しいかもしれませんが、各学校・地域でできることは沢山あるのではないでしょうか?
いろんな違いや価値観を認め合える子供達が日本の未来を強く支えてくれると考えます 。