This article is also available in: English
Wonderful People No.1 :
Dr. Diane R. Wiener, Director of the Disability Cultural Center at Syracuse University
シラキュース大学には”Disability Cultural Center (DCC)”という場所があります。
DCCでは障害者や障害を文化的側面から捉えた「障害文化」への意識向上を目的に、イベント・セミナー・ワークショップなどを企画運営しています。
一般的にアメリカの大学では、障害のある学生や職員に必要なアレンジをするオフィス(Disability Service Officeなどと呼ばれる) があります。
しかし、「障害文化」に焦点を当てたオフィスも持っている大学は3つのみ。
シラキュース大学のDCCはその1つであり、唯一キャンパス内のDisability Service Officeと連携し、専任ディレクターがフルタイムで在籍している場所です。
今回そのDCCのディレクター、Diane Wiener氏にインタビューする機会をいただきました。
彼女のキャリアは、メンタルヘルスの分野からスタートしました。
そのなかで障害者権利や障害者が直面している現状に興味を持ち始めたそうです。
博士号取得のために研究をする中で「障害学」に出会い、ソーシャルワーク・メンタルヘルス・不当に扱われているクライアントなどの関連性を考え始めました。
そして、階級・人種・性的区別・性別・アイデンティティー全てが「障害」と繋がっていることに気づいたのです。
ビンガムトン大学でキャリアを積んだ後、Diane氏は障害者権利運動で長い歴史を持つシラキュースで働く機会を得ました。
シラキュースと障害者の関連については以前ブログにも少し書きましたが、今回のインタビューで更なる歴史を教えていただきました。
例えば…
・シラキュース大学は障害者の脱施設化に強いコミットをした最初の大学の1つであること
・アメリカ初の「障害学」をSteven J. Tayler氏がシラキュース大学に設立したこと
・施設に入れられていた障害者の対応を積極的に進めた街の1つであること
・”Label Jars, Not People(瓶にラベルは付けても、人にラベルは付けるな)” 運動はシラキュース大学のHuman Policy(人間政策)センターから始まったこと
・“Nothing about Us Without Us (私たちのことを,私たち抜きに決めないで)“というアメリカの障害者運動で使われたコンセプトが今でも根強く残っている街であること
・知的障害者や精神的拘禁を強いられている人たちへ継続した施策があること
など。
シラキュース大学にはDCCを含めて以下4つのカルチャーセンターがあります。
The Office of Multicultural Affairs, the LGBT Resource Center, the Slutzker Center for International Services, the Disability Cultural Center (and Hendricks Chapel)
全センターがキャンパス内はもちろん、この地区でのダイバーシティ&インクルージョンにコミットをしています。
DDCで指揮をとるDiane氏はキャンパス内のイベント・授業・カリキュラム・環境づくりに関して”インクルージョン”を高めるための支援をしています。
またスピーカーとして登壇したり、国内外の様々なプログラムにも関わっているとのこと。
忙しい毎日ではありますが、障害者への理解を広げるため、人と直接話をする時間をとても大切にしているそう。
Diane氏からのメッセージ
アメリカには素晴らしい機会やワクワクするような事がたくさんあります。
しかし、障害者を見てみると、非常に高い失業率になっています。
私はすべての職場が、いつでも障害者を受け入れられる体制であるべきだと考えています。
これは’Nothing About Us Without Us’の考えにもつながっています。
また就労以外の場面でも、障害者はきちんと受け入れられる必要があります。
これは障害があるか無いかのトピックではなく、実現されなければならないことなのです。
障害者が行くことろは職場だけではありませんから、全ての場所で障害(者)に対応していく必要があります。
障害者は生活の全てのシーンにおいて、歓迎され、理解され、実在する人間として考えられるべきです。
障害者を避けるのではなく、私たちはもっと普段の生活の一部に障害者を入れていかなければなりません。
そして障害のある当事者もまた、法律制定など全てシーンにおいて決断をする一員となっている必要があります。
私が描く理想の世界は、自分の障害を「障害」と見られない世界です。
もちろん自分のアイデンティティーや誇りとして「障害」を見る人はそれで構いません。
障害が「課題」として見られなくなれば、生活環境や人との付き合いはとてもスムーズになり、素晴らしいものになるでしょう。
つまり”障害”のない障害者の世界ですね。障害のある人はまだ存在はするでしょうが、環境や周りにいる人がそれを”障害”にさせないからです。
平等・尊敬・愛情を持って、私たちは人との繋がりを作っていくことができるでしょう。
私たちはインクルージョン以上の環境を作りたいです。
またコンプライアンス以上の領域に行きたいです。
コンプライアンスの領域を越えれば、もっと強い繋がりを感じることができます。
みなさんに伝えたいこと、それは”インクルージョンだけで止まってはいけない”ということです。