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Wonderful People No.2 :
Paula Possenti-Perez, Director of the Office of Disability Services at Syracuse University
シラキュース大学には the Office of Disability Services (ODS)という障害のある学生に対して必要なサービスやサポートをアレンジするオフィスがあります。
(アメリカの各大学には同様のオフィスがあり、より平等にキャンパスライフを送れる環境を提供しています)
ODSに登録している障害のある学生はおよそ1,300名。
学習障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、精神障害など外見では分からない障害者が大部分です。
今回ODSのディレクター、Paula Possenti-Perez氏にインタビューする機会をいただきました。
大学で教育・カウンセリングを学んだPaula氏は、高等教育での障害学生をサポートする現在のフィールドで17年間仕事をされています。
シラキュース大学にきたのは去年のこと。
障害者権利運動の歴史はあり、より多くの機会に恵まれていることからシラキュースを選んだそうです。
ODSには、カウンセラー・コーディネーター・サポートスタッフなどが在籍。
障害のある学生たちが安心して学べる環境をつくるためフルサポートしています。
ODSに登録できる人はすでに障害を負っている人だけでなく、骨折など一時的にサポートが必要な人も含まれます。
学生たちはODSのサイト上から申請することができます。
提供されるサポートの一部をご紹介します。
- ノートテイカー(授業などの講義内容を書く人)
- スクリーンリーダー
- 試験などの時間延長
- 別フォーマットによるテキストの提供
- 読み書きのトレーニング
- 文章作成時のスペルチェッカー
- 住居設備対応
- 個別学習指導
インタビューの中で、学生をサポートする道具として”Smartpen”を紹介してくださいました。
専用のノートにこのペンで記入をすると、その文字を書いたときの周りの音声もいっしょに記録してくれるという優れもの。
あとから書いた文字にペンを当てると、その音声を聞くことができます。
日本でも購入できるようですが、私はまったく知らずただ感激しました。
このペンは、ADHDや他の障害のある学生の学習をサポートする道具として活用されているそう。
これまで一般的だったノートテイカーや、誰かのノートをコピーさせてもらうという方法より、このペンを使って授業を受けることでより効果的に授業についていくことができます。
人に頼らずに自分で”どんなメモをとったら分かりやすいのか”を知ることができるからです。
とPaula氏。
このSmartpen、学校だけでなく職場のミーティングなどでも活用できそうです。
Paula氏からのメッセージ
障害者は1人1人大きく異なります。
身体障害者、学習障害者、精神障害者など状態も違いますし、必ずしも1つのグループとして考えられる必要はありません。
それぞれに違う環境で、違う課題に直面しています。
一般の人は”障害”と聞くと、車イスの人を想像するかもしれません。
でも実際には車イスユーザー以外にも様々な状態の人がいるのです。
私たちが生活している世界は’able-body world’と呼ばれることがあります。
障害のない人が大多数であり、障害のない人がパワーを持っている世界です。
彼らが基準になっているので目の前にあるバリアがあっても気がつかないのです。
アメリカでも、まだまだ文化的・身体的にインクルーシブな環境が整っていない現状があります。
各メディア、テレビ、書籍などではまだ障害を医学的モデルで見る傾向が残っています。
もしこの考えに止まってしまえば、”障害をもっている本人に問題がある”という考えをずっと持ってしまいます。
問題は障害のあるその人自身ではなく、障害を感じてしまうこの”環境”が問題なんです。
考えなければならないのは、この”環境”をどう変えるかなんです。
私の理想の社会は、障害のある人が障害を感じずに生活出来るインクルーシブな環境です。
例えば、Mizukiが初めての留学先(Wisconsin)で経験したようなこと。
車イスを使っているという状況は忘れることはなくても、事前に車イスでのアクセス方法を調べる必要がなかったり、いつも誰かに助けを求める必要がなく生活出来る状態です。
これはただダイバーシティの考え方なのです。
全ての違いや独自性にはそれぞれ価値があり、そこには烙印のようなものは必要ありません。
私たちは現状から次の段階にシフトしなければならないです。
ODSにおいて、私たちは法律で守るべき内容以上のものを学生たちに提供しています。
障害自体に問題があるという見方の”医学的モデル”ではなく、どう環境を改善すれば障害がなくなるかを考える”社会的公正モデル”で課題を検討し、コンプライアンスよりはるかに上のレベルで対応をしています。
私たちは、学生たちが”障害アイデンティティー”を確立するサポートをしているのです。
彼らにはアメリカ国内だけでなく世界のすべての社会の中の一員でいてほしいと願っているからです。