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ミネソタ大学にDisabled Student Cultural Center (DSCC) という場所があります。
以前、シラキュース大学にあるDisabled Cultural Center(DCC)を紹介しましたが、ここと同じく障害を文化の1つとして捉え、キャンパス内での理解向上を目的に運営しています。
ミネソタ大学のDSCCは、運営者が学生という点でシラキュース大学のDCCとは大きく異なります。
今回、DSCCのアドバイザーであるJacob Colon氏と繋がることができました。
メールの返信をいただいた際に驚いたのは、その丁寧な文面!
「どんな人なんだろう?」と会う前からすごく楽しみにしていました。
インタビュー当日。
私は予定時間より少し早めにDSCCのオフィスに到着しました。
そのあとすぐにJacob氏も来られたのですが…なんともう1人、Jocob氏の腕を取ってサポートする方もいました。
すぐに彼が白杖を持っていることに気づき、視覚障害者ということを知ったのです。
これはまた良いサプライズで、どんな話が聞けるのか一層楽しみになりました。
Jacob氏はミネソタ大学の学部生で、主専攻は児童心理学、副専攻はラテンアメリカ学です。
(アメリカの大学では、主専攻を2つ取ったり、主専攻・副専攻という形で2つの学問を学ぶ事ができます)
現在は家族と離れて、大学の近くで生活しているとのこと。
授業では、合理的配慮として以下のようなサポートを受けています。
- アクセス・アシスタント:黒板、スライド、動画など授業で使われる資料の視覚情報を説明する人。
- ダブル・タイム:試験時間の延長。
- 試験場所の変更:通常の教室ではなく、大学内のDisability Resource Center(障害のある学生をサポートするオフィス)にある部屋を利用。防音室があり、そこでスクリーンリーダーを使用して回答を録音する。
DSCCは1991年に設立されました。
障害のある学生たちが大学内での居場所を求めて運動を起こしたことが始まりでした。
Jacob氏は2012年にDSCCに参加し、昨年は団体のトップとして運営。
現在はアドバイザーのポジションで、大学内の様々なイベントを計画しています。
例えば、”Movie Night”という映画イベントを開催し、視覚に障害のるミュージシャンとして有名なレイ・チャールズの伝記映画を放映。
また大学内の他団体とコラボし、ライブイベントも開催したそう。
その時には、なんと聴覚障害のラッパーがパフォーマンスしたとのこと!
私も家に帰ってから調べてみたのですが、すごくカッコイイのです!
是非チェックしてみてください。
* Signmark http://www.signmark.biz/
* Sean Forbes http://www.deafandloud.com/
DSCCはイベント計画だけでなく、障害者への安全な環境づくりもサポートしています。
ミネソタ大学には、”624 WALK”というセキュリティ・エスコート・サービス(夜間に1人で移動するなど、安全に目的地まで行けるようエスコートしてくれるサービス)を提供しているのですが、以前は聴覚障害者には対応していませんでした。
というのも、このサービスをリクエストする手段が電話のみだったのです。
しかし、DSCCと他の団体がリクエストプロセスの改善を強く要求。
その結果、テキストメッセージでもリクエストを受け付けるようになり、聴覚障害者も同じようにサービスを依頼できるようになったそうです。
Jacob氏と私は、アメリカと日本それぞれの国で障害者が直面している課題を話し合いました。
その中で彼が言っていたメッセージをご紹介します。
アメリカにおける深刻な課題の1つは教育です。
僕は幼稚園から小学校3年まで、特殊教育のクラスにいました。
そのクラスには知的障害や車イスの学生もいました。
今でも嫌な記憶として残っているのは、先生たちが僕たちをいつも幼稚園生のように扱っていたこと。
誰でもそうだと思いますが、ある程度の年齢になったらもう子供扱いはされたくないでしょう。
どんな障害があったとしても、先生は僕たちにも平等に接するべきです。
特殊教育は必要だとは思います。
でも色んな障害のある学生たちを1つの教室に入れ込むという状況は変えなければなりません。
インクルーシブ教育は、障害のある学生だけでなく、障害のない学生にとっても良い環境です。
小さい時からお互いに接点があることで、その後も自然にコミュニケーションが取れるようになるからです。
もう1つの課題は障害者の失業率です。
アメリカにはADA(障害を持つアメリカ人法)はありますが、障害のある学生の採用率は低くなっているという情報を聞きました。
中でも僕と同じように視覚障害のある人の70%は失業状態だと。
企業の中には障害者を雇用する事=借金をする事と捉えているようです。
障害者を雇うと必要な労働環境を整える必要があり、それをコストと考えているのです。
”ああ、この人を雇うとこの高い道具も買わないといけないんだなぁ。このリターンはどこにあるんだろうか?” と。
障害者の失業率を改善するためには、まずこのような考え方を変えていかなければなりません。
僕たち障害者はこれからも自分たちに何が必要なのかを訴え続けていきます。
そして、家族・友人・同僚と良いサポート関係を築いていきます。
そして、社会に伝えていくのです。
”私たち障害者は、歩く事ができないかもしれない。物が見えないかもしれない。何かに集中できないかもしれない。でも皆さんと同じ人間です。”