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先日、ニューヨーク州シラキュースのOnondaga Community Living, Inc. (OCL)を訪問しました。
ここは、私の研究テーマでもある”障害者就労”を支援するところです。
今回は就労支援ディレクターのLawton Williamson氏を取材させていただきました。
彼をこの世界に引き込んだのは、Bobという視覚障害のある友人との出会いでした。
Bobはスポーツキャスターになるという夢がありました。
正直なところ、Lawton氏は
「視覚障害があるのに、どうやって実現できるんだろう…?」
と思っていたそう。
しかしBobは大学で学び、ラジオの深夜番組でスポーツキャスターの仕事を得たのです。
なぜ深夜勤務だったのか?
それは、ラジオ局への通勤を考えてのことでした。
日本でもアメリカでも、障害者の通勤手段というのは課題の1つ。
多くの人は公共交通機関を利用、または車を運転して通勤します。
しかし、身体の状態よってはそれが簡単にできない場合があります。
このときの視覚に障害のあるBobの通勤方法は、
夜に両親が車でラジオ局まで送る。
↓
Bobは仕事開始。両親は帰宅、就寝。
↓
翌朝、Bobの仕事が終了。両親が車で迎えに行く。
という流れで上手く勤務ができたというのです。
Bobはその後、DJとしてのビジネスも始めました。
このときは料金を一般のDJより少し低く設定することで仕事を得たといいます。
それだけに止まらず、そのあと不動産ビジネスもスタート。
営業マンとして数年経験を積んだあと、両親の家のすぐ隣に物件を購入し、そこを自分のオフィスとしました。
従業員を雇い、彼らが電話をとったり、物件まで運転をしてBobのビジネスを動かしていったそう。
会社のオーナーはBobなので、物件の契約が決まるごとに収入が入ります。
順調に利益を上げ、見事、不動産ビジネスも成功させました。
”障害があっても自分の理想の仕事はできる”
Lawton氏はBobの姿を見て
「障害者の”理想の仕事”を実現する支援をしたい!」
と考えたそうです。
Lawton氏が勤めるOCLでは、履歴書の作成サポート・面接練習・雇用後のフォローアップ面談・その他雇用関連の支援などを行っています。
ニューヨーク州の教育部門から認可されている非営利団体なので、これらのサービスは基本的に無料。
オフィスにはコンサルタント・ジョブコーチ・コミュニティネットワーカーなども在籍し、障害者の就労をしっかりと支えています。
日本の障害者雇用の現状と比較すると、アメリカの障害者は、より多くの業界・職種で活躍できる機会があります。
これまでにも紹介してきたADAという法律(障害だけをベースに雇用拒否できない)以外にも
障害者を雇用することで、雇用主は税額控除を受けられることをLawton氏から教えていただきました。
日本の障害者雇用では、法定雇用率というものが定められています。
50名以上の一般企業では、全体従業員の2%以上は障害者を雇うという内容。
もしこれに達していなければ罰金を支払うことになります。
アメリカの一般企業では、決まった数の障害者を雇う必要はありませんが、障害者を雇用することで
インクルーシブな職場環境作り、ポジティブな企業PRだけでなく、資金面でのメベフィットもあるのです。
仕事に必要なスキルを持っていれば
障害があっても、誠実・仕事熱心・頼もしい従業員の1人として見られるのが
アメリカの就労環境
と、Lawon氏は教えてくれました。
後半に続く・・・
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