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こんにちは、Mizukiです!
パシフィックADAセンター訪問の前半では障害者に関する法律について触れました。
後半では、私のリサーチテーマである障害者雇用の部分を話していきたいと思います。
写真右端に映っているJan氏が実際に経験した就職活動での出来事を話してくれました。
彼女は生まれつき腕と脚がありません。
彼女が幼少期のころはまだADA (Americans with Disabilities Act = 障害を持つアメリカ人法)はなかったので
地元オクラホマシティーでの車イス生活は困難が多かったといいます。
しかし両親が強いアドボケートとなり、Jan氏を私立学校に入れ、一般教育を受けさせました。
当時、公立学校で障害のある生徒が受けれれるのは特殊教育のみだったからです。
その後、カリフォルニアの大学に進み国際関係学を学んだJan氏。
私が特に驚かされたのは、大学時代にパリに1年間留学もしたいたということ。
パリも当時はまだバリアフリーが整っておらず、車イス生活は不便なことが多かったそうです。
留学を終了後、アメリカに戻ってきた彼女は法科大学院へ進み、卒業後は弁護士助手として勤務。
現在の夫と出会ったあとは再度カリフォルニアに戻り、それ以降ベイエリアで障害者関連の仕事に従事されています。
日常生活は、肩で電動車イスを操作して移動をしているJan氏。
見た目ですぐにわかってしまう障害が原因となり、最初の就職活動では差別に直面したといいます。
それは、ちょうどADAが制定された時期でした。
さまざまな弁護士事務所で面接を受けましたが、ほとんどのケースで面接時間が極端に短かく
「面接官は私と話したくないんだ」と毎回感じていたそうです。
もっとひどい時は、面接官たちがバスケットボールの試合の話題に集中。
面接中にも関わらず、一切Jan氏への質問はありませんでした。
もちろん何度も「面接」の話に切り替えようと試みましたが、面接官たちは一向にバスケットボールの会話をやめず、彼女のほうから面接を終わりにしたいと依頼したそうです。
“Equal Opportunity = 平等な機会”という言葉は、アメリカで障害者権利を主張する方々からよく聞きます。
雇用の場面でも、この”平等な機会”は障害者だけでなく、全ての人に対して重要視されています。
1990年に制定されたADAの基盤になっているのは、1964年の公民権運動 (Civil RIghts Movement)なのですが
「平等な機会」という言葉はこの公民権運動のときに使われ始められました。
しかし残念ながら、まだアメリカの雇用市場で「平等な機会」は十分に提供されていないという現実があります。
例えば、仕事への応募方法はオンライン受付のみという雇用主が増えています。
オンラインフォームの中には障害者が十分にアクセスできない仕組みになっていることもあり
(例:音声読み上げソフトに対応しないページ→ 視覚障害者が応募できない)
障害者が平等に「応募する」という機会が与えられていません。
どうにかして応募ができたとしても、オンラインフォームがきちんと対応していないことで
記入漏れや記入間違いなどが発生してしまう可能性があります。
その応募書類を見て、雇用主は「この人は障害があるな」と気づくことになり、
障害を公開したくなくても、この過程で障害を公開しているのと同じ状況をつくってしまうのです。
アメリカでは障害者が様々な業界で働いています。
しかしながら、無意識な差別をしている雇用主もいます。採用後、障害者を昇進させないというケースです。
私は学生として留学していたとき、スーパーの店頭で車イスに乗った店員がお客様に買い物カゴを渡す仕事をしている場面を見ました。
日本では全く見たことがない光景だったのですごく驚き、単純にすごいなと思いました。
でも、実際は障害者を雇用し、店頭、つまりお客様が一番見えるところに配置することで
「見てください!私たちは障害のある人を雇用しているんですよ!」
と企業PRのために使っている店もあるそうです。
そういう店舗に勤めると、障害者はずっと同じポジションで働く現状があると伺いました。
「私はよく雇用主にこう質問するのです。
”管理職に何人の障害者がいますか?”
私自身もう何年もマネージャーとして働いてきました。
だから、管理職としてどれくらいの障害者がいるのか、ということにとても興味があります。
意地悪で聞いているのではなく、ほんの少しでも雇用主の方々に考えてもらいたい。
メール室や新入社員レベルの仕事から少しでも上の仕事を障害者もチャレンジできるように。
障害者も昇進できる機会があって当然なのです。」
平等な機会を全ての人に与えるのはとても難しいことです。
一人ひとり仕事に対して違う目的を持っていて、どんなキャリアが欲しいかもそれぞれ異なります。
日本では障害者と健常者は教育の段階から分けられているケースがまだ多く
そのために、お互いをあまり「知らない」という状況があります。
ここで必要になってくるのは、積極的なコミュニケーションだと私は思います。
雇用主は障害のある求職者の話をもっと積極的に聞くべきです。
彼らのことを十分知る前に「この仕事は障害者には無理だろう」と判断しないでください。
また、障害者自身ももっと雇用主とコミュニケーションをとるべきです。
自分は何ができるのかを伝え続け、雇用主にきちんと理解してもらう努力をするべきです。
そうすることで平等な機会は徐々に作ることができます。
お互いが最初からコミュニケーションととらずに勝手に判断したり、諦めてしまうことが一番良くありません。
相手を知ろう、知ってもらおうと互いに努力すればコミュニケーションすることは可能です。
そうすることで誤解がなくなり、より良い雇用関係が生まれていくのではないでしょうか。