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マイクロソフト訪問レポートPart 1では、昨年新たにスタートした自閉症者の採用プログラムについてご紹介しました。
レポートPart 2では、マイクロソフトの職場環境に注目していきます。
多様な人材を受け入れ、その能力をどう活用しているのでしょうか?
Teresa McDade氏(写真左)は ワーク&ライフ・ベネフィットという部門のディレクターであり、
障害や医療的支援が必要な従業員、または面接を受ける方に対してのサポートやアレンジをしています。
一人ひとりに最適な配慮を行うため、一般従業員や管理職、人事担当者、医療機関などといっしょに話し合いながら対応方法を考えていくそう。
アメリカでは採用の際、障害を公開するかどうかは本人が選択できることになっており、
視覚的にすぐ認識できる障害であっても、本人が公開したくなければ公開する必要はありません。
マイクロソフトでは、採用の時点で障害を公開した方であれば、
その時点から、Teresa氏のチームがヒアリングを行い、対応に向けて準備を進めていきます。
従業員の中には、採用後しばらくしてから障害を公開する人もいますし、
また骨折など短期的に配慮が必要な人もいます。
いずれの場合も、従業員は直属の上司に相談する必要はなく、
直接人事マネージャーに状況を伝え、Teresa氏のチームが対応をするかたちになっています。
「すべての従業員が必要な業務をきちんと行えること」
これが一番の目標だとTeresa氏は言われていました。
合理的配慮をアレンジするために費用が発生する場合もありますが、
ほとんど費用は、会社全体で一つにまとめられた予算から支払いが行われる仕組みになっており、
各部門が予算の心配をする必要はありません。
この仕組みがあることで、従業員が必要なアレンジを依頼することへのプレッシャーを軽減することができます。
マイクロソフトのインクルーシブな職場環境に大きな影響を与えているのが、Employee Resource Groups (ERG )です。
ERGとは、従業員が本業とは別にボランティアベースでの活動をするグループのことですが
マイクロソフトには数多くのERGが存在します。
Cross Disability Employee Resource Groupというのが、障害者への理解向上を目指して活動しているグループ。
その中には、さらに12のネットワークがあり、
聴覚障害・視覚障害・機能障害・発達障害・学習障害など障害の種類で分けられています。
マイクロソフトのような大きな企業に勤めていると、同じ障害をもった従業員が近くにいない可能性もあります。
しかし、自分の関連や関心のあるERGに所属することで
同じ状況にある人や、同じ分野に興味のある人とつながることができます。
その繋がりを活用し、職場やプライベートでの可能性をどんどん広げていく機会にもなります。
また、毎年マイクロソフトで開催されている “Ability Summit”についても伺いました。
このサミットでは、ハッカソン(hackathon)というイベントが特に注目されているそうで、
参加者がそれぞれ持っているアイデアや意見などを共有しながら、既存の課題を解決していくというもの。
ハッカソンから始まったプロジェクトの1つに、視覚障害者のナビゲーションシステム開発があります。
小規模なチームが試作品をつくり、そのあとエンジニアチームが商品化を進め、
実際に携帯電話へインストール可能な状態まで仕上げました。
このシステムは盲導犬のような役割を果たし、「階段に近づいています。歩道にさしかかっています」など
音声で状況を伝えながら、視覚障害者へのナビゲートをしてくれるそうです。
この他にも、マイクロソフトには従業員が持っている情報や知識を活用しながら
職場環境の改善を継続して行っています。
そのなかの1つに”Unconscious Bias Program”という研修プログラムがあります。
Unconscious Biasは「無意識な偏見」という意味。
このプログラムを受けることで、無意識な偏見がどのように個人の言動に影響を与えているのか、
それによって周囲の人たちにどんな限界を作り出しているのかを知ることができます。
また、普段気づかずに持っている偏見に気づくことができ、
そのバリアをどうずれば取り除けるのかというアドバイスもしてくれます。
一般にも公開されているトレーニングなので、ぜひ以下のリンクから試してみてください(日本語対応あり)
https://www.mslearning.microsoft.com/course/72169/launch
Nicole氏とTeresa氏のインタビューを通して、
マイクロソフトがインクルーシブな職場環境を促進するために、
様々なシステム・プログラム・研修などを導入していることがわかりました。
世界中にいる様々なお客様に新しい商品やサービスを提供できるのは
マイクロソフトに「違い」を持ったエキスパートたちがたくさん集まっているからに違いありません。
人と違っていることにネガティブなイメージを持って
大多数の人たちと同じであることの方が安心するという人もいるでしょう。
しかし、同じ考えを持った人が集まったグループからは、
人々の生活を変えるような画期的なアイデアを生むことはとても難しいです。
ダイバーシティとインクルージョンは、マイクロソフトにとってとても重要な企業文化であり、
社会に大きなインパクトを与えることができる、とても価値のあるものと言えます。
もっと多くの会社がダイバーシティの本当の価値に気づき、「違い」と活用してほしいです。
そうすれば、いま社会にある課題も少しずつ解決でき、よりより社会をいっしょに作っていけるでしょう。