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シアトルにあるスターバックス本社

昨年10月からアメリカで障害者雇用をテーマに各地を訪問していますが、

「絶対に訪問したい!!」と考えていたのはスターバックスです。

 

東京でファッション小売業界で働いていたとき、

私はCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任と訳されれる)の仕事を担当していました。

CSRとは、社内にあるリソースを活用しながら、より良い社会を作るための取り組みです。

実際に企画・運営した活動は、環境に配慮するためショッパー(商品を買った時に入れてもらう袋)の削減活動、

オーガニックコットンの栽培、職場の環境改善を目指して女性従業員の委員会を発足など。

 

取り組みの範囲は多岐にわたり、私はCSRの仕事をする中で、

障害のあるお客様への接客研修を新しく取り入れられないかと考えました。

そこで、社内外の障害のある人へ、こんなアンケートを行ったのです。

「”ここの接客は素晴らしい!”と感じた店舗・会社名を教えてください」

 

アンケートの結果、第一位は東京ディズニーランド・東京ディズニーシーでした。

ここに関しては、あまり驚きはありませんでした。

東京ディズニーランド・東京ディズニーシーは日本で「夢の国」と言われていますよね。

常にシステムやサービスを向上しつづけ、来場者に楽しい時間を過ごしてもらうというポリシーを掲げており、

そのため障害者割引も実施していません。 (*1)

私自身も何度か行ったことがありますが、接客のクオリティは本当に素晴らしいです。

 

このアンケートで気になったのは、1位よりも2位にランクインした会社。それがスターバックスでした。

スターバックスでコーヒーを買う、というのは多くの人の日常生活になっているかと思います。

日本にスターバックスが来たのは1995年。現在の店舗数は1,000以上です

スターバックスでは従業員のことを”パートナー”というそうですが、

アンケート結果から、多くの障害者がこのパートナーの接客に大変満足していることがわかりました。

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スターバックス本社1階にある店舗

 

個人的にも東京で仕事をしていたとき、昼休みによくスターバックスを利用していました。

そこでいつも感じていたのは、パートナーの皆さんがMoon Rider (車イスユーザー)の私に対して、

必要な配慮はするが、決して過度な配慮はしないということです。

いつも笑顔で迎えてくれて、どのように私をサポートすれば良いかを覚えてくれています。

 

私の希望は例えば、

コーヒーを持ちながら車イスを動かすことができないので、

コーヒーはパートナーの方にテーブルまで持ってきてほしい。

車イスで来店するとすぐ椅子を外してくださる飲食店が多いですが、

私は普通の椅子に移りたいので椅子は外さずに置いておいてほしい。

というもの。

利用していた店舗には何人ももパートナーが在籍していましたが、このような細かい希望を覚えてくれていました。

これが本当にありがたく、毎回同じことをお願いしなくて良いというだけで、とても快適に過ごすことができました。

 

スターバックスを愛する一人としても、こんなに多くの店舗を有する会社が

どのようにして高い接客力を維持しているのかとても興味がありました。

残念ながらスターバックスジャパンへ訪問する機会はなかったのですが、

なんと!シアトルでスターバックス本社を訪問させていただきました!

しかも2回もです!

お話したいことがたくさんありますので、全4回に渡ってレポートします。

 

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シアトルにあるスターバックス本社

 

一回目の訪問では、

スターバックス内にあるEmployee Resource Group (*2) の一つ、”Starbucks Access Alliance (SAA) “の定例ミーティングに参加させていただきました。

SAAは、スターバックス内のアクセシビリティ向上を目指して活動しているグループです。

 

定例会の前にお会いしたのが、このグループのリーダー Cori Pudelko氏。

障害者採用について質問をすると、

世界中のスターバックスで様々な障害者パートナーが活躍していることを教えてくれました。

人を採用するときは、 “The person first”=その人がどんな人であるかを重要視するとのこと。

求職者のなかには障害のある人もいるかも知れません。

でも最初に見るのはその人がどんな事でできるかだと言います。

持っているスキルや条件に満たしていることが採用する上で必要不可欠なのです。

 

SAAの定例ミーティングでは、約12名が会議室に集まっていました。

部屋に入ってまず驚いたのは、メンバーのうち2名が聴覚障害の方で、手話通訳者も会議に同席していたということです。

私は日本の一般企業の会議で、このような光景を見たことが一度もありませんでした。

そこから更にびっくりしたのは、その2名の聴覚障害者も他のメンバーと同じくどんどん発言をして

会議のディスカッションにしっかり参加しているということです。

 

例を挙げると、

議題の1つに株主総会でパートナーが着るTシャツのデザインについての話し合いがありました。

「Tシャツの前面にいくつかデザインをレイアウトしてはどうか?」という案が出たところ、

聴覚障害のメンバーがこんなことを言ったのです。

デザインについてちょっとフィードバックしていいですか?

Tシャツの前面に多くの情報(デザイン)があると、

聴覚障害者にとって相手の手話を読み取る妨げになってしまうこともあります。

また、弱視の人にとっても色のコントラストを見分けることが難しいでしょう。

ロゴを入れたいのであれば、右上など一箇所にするか袖のところに付けるのはどうですか?

 

袖に付けるアイデア、良いですね!

Cori氏が即答し、他のメンバーからも共感の声が上がりました

その素晴らしいアイデアは、その人が聴覚障害者としての経験があるからこそ気づく視点であり、

私を含めその会議室にいた人にとっては想像も出来なかったことです。

これまで多様性(ダイバーシティ)について、色々な企業を訪問してきましたが、

「実際にこういう気づきがあるんだ」ということを直接見て、実感することができました。

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スターバックスのミッション「 人々の心を豊かで活力あるものにするために-ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」

 

アメリカでは、一人ひとりが意見をもっていること、それをきちんと発言することが重要視されます。

日本は文化的に集団意識が高く、みんなと意見が合うことがより重要と考えられています。

そのため、年上または地位の高い人が違う意見を言うと、自分の意見は言わず隠してしまう傾向があります。

 

スターバックスで私が見たのは、マイノリティと言われる人たちも含めて、

みんなが平等に発言できる環境があるということ。

多様性の本当の強みを肌で感じることができました。

 

人とは違う観点や視点は周りに新しい気づきを与えます。

もし、すべての人が同じ意見を持ち、心のなかで考えていることを表現しないままだと

新たな発見も少なく、そこから新しいアイデアを生み出すことも難しくなるでしょう。

多様な人がお互いを認め合い一緒に働くという、ダイバーシティ&インクルージョン

会社の文化、商品や接客サービスなどにも大きな変化をもたらします。

そのようなインパクトが、能力や才能能ある人材をさらに引き寄せ、

何度も利用してくださる顧客を生むことができるのではないでしょうか?

 

Part 2へ続く

 

*1 過去の記事で紹介していますのでご参照ください。

東京ディズニーランドはなぜ障害者割引がないのか

*2 メインの仕事とは別にボランティアベースで活動する社内グループ。多くのアメリカ大手企業が同様のグループを持っています。シリコンバレーのCiscoを訪問した際にもお話を伺っていますのでご参照ください。

業務時間の”ボランティア活動”が企業を更に強くする ~Cisco訪問 前編~

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