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私たちの生活を大きく支えているサービスの1つにネットショッピングがあります。

簡単に素早く買い物ができ、また配送システムも改善され、注文してすぐ購入者の手元に届く仕組みになっていますよね。

私もだいぶネットショッピングに頼って生活をしています。

日本に住んでいた時も、今のアメリカ生活でも特にお世話になっているのはAmazon。

シアトルでは・・・何と!そのAmazon本社を訪問させていただきました!

インタビューに応えてくださったのはCynthia Biles氏(Credit Operations Manager for the FBA business)です。

短い時間ではありましたが、とても貴重なお話を伺うことができました。

 

Cynthia氏はワシントン州出身で、私がいま所属しているシラキュース大学でMBAを取得されました。

彼女の弟は、筋ジストロフィーで電動車イスを使っていたそう。

その弟さんの出来事を私に話してくれました。

 

弟が車イスに乗っていたのは1970年代中ごろで、当時ワシントン大学の学生でした。彼がエレベーターを乗るときはいつも、誰か他にもエレベーターに乗る人がいることを確認してから乗っていました。というのは、病気のためにエレベーターのボタンを押す力がなかったためです。

ある日、彼は大学のエレベーターを利用しました。いつものように他にも誰か乗ることを確認して。しかし、車イスの向きを変えようと回転している間に、その人はエレベーターを降りてしまいドアが閉まってしまったのです。

1970年代は今のように携帯電話を持ち歩いたり、簡単にネットにアクセスできる大学生はいません。弟は非常ボタンを押す力もありませんでした。しかも、その日は金曜日の夜。弟は数時間エレベーターのなかに閉じ込められたままでした。彼の体の状態から、そのまま週末をエレベーターで生き抜くということは出来なかったと思います。私の家族はとても心配していました。

 

Cynthia氏は障害者を取り巻く環境について、昔はアメリカも日本と同じような状況だったと話しました。

時代とともに新しい法律や規則ができたことで、人の考えも徐々に変わっていったといいます。

努力なしに人は考えを変えることはできません。

新しいコンプライアンスや法律を守るためにアメリカの人は考えを変え、今の社会が作られていったのでしょう。

 

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日本では、今年の4月1日から障害者差別解消法が施行されました。

アメリカほど訴訟が多くない日本では、新しい法律へ関心を示す人も少ないことは事実。

しかし、この法律が施行される前後には多くの障害者団体がパレードなどを企画し、より多くの人に知ってもらおうと活動をしていました。

 

以前、シラキュース大学 法学部のKanter教授に取材をしたとき (*1)、

法律はただ紙に書かれた文字にすぎません。

実際に使われるまで何の意味も果たさないのです。

と言われていました。

障害者差別解消法に関しても、まず周知してもらうことがすごく重要だと思います。

存在と内容を理解してもらうことで、そのルールに基づいて人が考えや行動を変えていき、障害者の権利がきちんと守られる社会に変わっていけるのです。

 

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Amazonでの面白い取り組みを2つご紹介します。

1つ目は、合理的配慮の提供方法。

日本では多くの企業が、「合理的配慮は障害のある従業員のためだけに提供するもの」と考えているかと思います。

しかし、アメリカ企業(特に大手企業)では、このような必要な配慮はすべての従業員に提供されるものなんです。

Amazonはトラブル・チケット・システムというものを導入しており、全従業員がこのシステムを使って必要なものを申請できる仕組みになっています。

また「あることで困っているけど、どんなものを使えば良いのか分からない」という人もこのシステムを通して、過去に同様の経験をした他の従業員からアドバイスをもらうことができます。

Cynthia氏は、従業員同士の助け合いがAmazonの重要な企業文化の一つだと教えてくれました。

合理的配慮だけに限らず通常の業務に関しても、自ら困っていることをきちんと伝えることができれば、上司や同僚がしっかりサポートして一緒に解決してくれる環境があるといいます。

 

2つ目は、社内研修の豊富なアクセシビリティ。

Amazonでは従業員向けの社内研修がたくさん用意されています。

研修内容の種類も多いのですが、学ぶ方法もたくさんあるのです。

例えばライティングの研修を受ける場合、学ぶ方法は、

・動画を視聴する

・印刷された資料を読む

・オーディオで聴く

など、複数の学び方から自分に合ったものを選べます。

日本の会社でも従業員向けの研修を実施しているところは多いでしょう。

しかし中には障害のある従業員には利用できない(しにくい)研修も存在します。

そのことが原因で、障害のある従業員と障害のない従業員のスキル・経験に差が出てしまうことにもつながり、昇進に影響が出たり、キャリアアップのための転職が難しくなる状況があります。

社内研修に様々なアクセス方法があるということは、ただ単に障害者のためだけではありません。

年を重ねるごとにすべての人は視覚や聴覚の能力を失っていきます。

若い人が少なくなる一方の日本のような社会では、アクセシビリティを向上させ、

能力のある従業員を確保しそのスキルを伸ばせる環境をつくることが重要なのではないでしょうか。

 

過去に日本で企業を訪問したとき、よく言われたのが「人事部は障害者への理解があるが、他の部署にはその意識が広がっていない。」という言葉です。

この状況がある会社では、障害者従業員が直属の上長に合理的配慮を依頼することは難しいでしょう。

 

私がアメリカで取材した企業は違うアプローチを活用しています。

社内全体の合理的配慮を請け負う専任チームを配置し、対応に掛かる費用もそのチームが管理しているのです。

従業員は上長に相談する必要はなく直接この専任チームに連絡を取り、必要なものを得る。

この方法で、従業員はフルに仕事のパフォーマンスを発揮できて会社にもメリットがありますね。

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お客様の生活をより快適にするために常に挑戦し、新しい商品やサービスを取り入れているAmazon。

今回のインタビューで、Amazonではすべての従業員が自分の可能性を広げられる環境にあるんだということを実感しました。

すべての従業員の中には、もちろん障害者従業員も含まれます。

合理的配慮や社内研修をより多くの人に利用できるようにするには、「コストがかかる、時間が掛かる」というネガティブな面も見えてしまいます。

しかし見方を変えれば、より多くの従業員が問題なく仕事に集中できる環境を作ることができ、

結果、長期的な会社の戦力になってくれるというポジティブな面も見えてきます。

 

十分な合理的な配慮や社内研修を実施されていない企業の方へ。

すべての従業員が利用できない理由を言い続けるのではなく、どうすれば実現できるのかという視点でぜひ考えてみてください。

平等な機会をすべての従業員に与えることで、会社はもっと生産性を高めることができ、利益をもたらしてくれるはずです。

障害があることは大変と感じる人もいるかもしれませんが、私はそこに多くの可能性があると思います。

 

*1 シラキュース大学 Arlene Kanter教授のインタビューは以下から読むことができます

法律と現実の大きなギャップ

 

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