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シアトルで最後に訪れた企業はCostco（コストコ）です。
Costcoの本社があるのは、シアトルから東へ車で約30分ほどのイサクワという街。
店舗はWarehouse＝倉庫と呼ばれ、世界に全703 (2016年4月9日 現在）の倉庫店を保有しています。
実は私は、日本でもアメリカでもCostcoに行ったことがなく・・・
今回の訪問時に店舗の方も見学できたら良いなと期待しながら本社オフィスへ向かいました。
取材に応じてくださったのは人事部 副部長のBrenda Weber氏です。
まずはCostcoの雇用について。
採用時に一番重要視することは、その仕事に必要とされる基準を満たしている人材であるかどうか。
これは他のアメリカ企業の取材でもよく耳にすることですが、Costcoの場合、従業員の大部分が倉庫店での仕事になり、そのほとんどが体を動かす業務。
仕事の中には、屋外に出て駐車場のカートを集める業務や、気温の低い冷蔵・冷凍倉庫の商品を管理する業務もあります。
そこでCostcoはすべての仕事のポジションにおいて、Job Analysis （業務分析シート）というものを導入しています。
このシートには、各仕事でどんな動作が必要になるかが細かく記載されているのです。
例えば仕事をする中で、立つ・歩く・座る・持ち上げる・物を運ぶ・押す・ひっぱるなどの動作がどれくらいの頻度で必要になるか、
その頻度のレベルも、never（全くない）・occasinally（時々）・ frequently（頻繁）・ continuously（常時）で表されています。
病院にかかっている人などは、このJob Analysisを事前に医師に見てもらい、身体に無理無く働けるかをチェックしてもらうこともできます。
職場で配慮しなければならないことがあれば、医師からその指示を書いてもらい、応募者がCostcoに提出。
それを受けてCostcoが調整を進めます。
応募者はJob Analysisの内容を確認した上で、「配慮がなくても働ける」または「合理的配慮を受けて働ける」とサインする場所があります。
配慮が必要と答えた場合は、どんな配慮が必要なのか応募者と直接話し合います。
もし具体的な解決策がない場合、JAN (Job Accommodation Network) という企業の合理的配慮をサポートする団体にアドバイスをもらうこともあるそう。
「配慮がなくても働ける」と答えた場合でも、業務で必要な動作が本当にできるか確認するためのデモンストレーションを依頼することもあります。
というのは、採用担当のマネージャーの中には、これまで障害者を採用した経験がない人もいます。
そういう人にとっては、例えばMoon Rider（車イスユーザー）があるポジションに応募して「特別な配慮はいらない」と答えても
「どうやってこの仕事ができるのだろう？」と単純に想像がつかないのです。
また過去にMoon Riderを採用したことがあったとしても、１人ひとり状態は違いますし、仕事の内容もそれぞれ違ってきます。
どうやってその仕事をこなすかは、その時のその仕事に応募したMoon Riderしかわからないこと。
デモンストレーションで実際に仕事ができることを見せることで、雇用主（Costco）も応募者もお互いに納得して採用プロセスを進めることができるのです。
取材のあと、Brenda氏はCostco本社となりにある店舗に連れて行ってくださいました。
店舗に入ってすぐ気づいたのは、電化製品のコーナーで接客をしていた店員のTomさん（仮名）。
パッと見、まったく普通の店員さんのようですが、履いていた短パンからは義足が見えていました。
Tomさんは健常者としてCostcoで仕事をしていましたが、10数年前に事故で両脚を失ったそうです。
復職したときは車イスでしたが、今は義足で接客の仕事をしています。
Tomさん以外にも見た目でわかる障害者の方が数名、店頭で働いていました。
アメリカは日本のように障害者採用に法定雇用率はなく、障害の有無を雇用主が聞くのは違法になっています。
そのため、Costcoでも障害者従業員の人数のカウントや人数の推移を追跡はしていないといいます。
ただBrenda氏は「各店舗に少なくとも１人は障害のある人が働いていると思う」と言われていました。