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お久しぶりです!Mizukiです。前回の更新から1ヶ月以上経ってしまいました…スミマセン。
先月はフロリダ州のマイアミとワシントンDCを訪問してきました。
記事が前後してしまいますが、まずはワシントンDCの取材レポートからお送りします。
ワシントンDCで最初に訪問したのは、AAPD(アメリカ障害者協会)。
取材に応じてくださったのは、アウトリーチ・ディレクターのZach Baldwin氏です。
AAPDでは様々なプロジェクトを通して、障害者の平等な機会や経済的パワー、自立生活などを促進しています。
今回は私の研究テーマである「雇用」を中心にお話を伺いました。
まずはAAPDのフラッグシップのプログラムであるサマー・インターンシップについて。
これは障害のある学生達(大学生・大学院生が対象)を対象にした10週間のインターンシップです。
プログラムを始めたきっかけは、健常者と障害者のキャリアのギャップを埋めたいという考えからだったそう。
多くの研究結果からもインターンを経験したほうが、その後のキャリア成功率が高いというデータがあったことで、このプログラムが本格的にスタートしたといいます。
アメリカに住むどの地域のどんな経済環境下にいる障害者も応募ができるよう、住居・交通費・生活費はAAPDが全面カバー。
インターン先は政府関連機関や非営利障害者団体などが中心です。
選ばれた学生は、AAPDオフィスのすぐ近くにあるジョージワシントン大学のバリアフリー寮で生活をします。
最初の週にオリエンテーションがあり、ワシントンDCでの生活情報(公共交通機関の利用方法など)を聞き、ゲストスピーカーから障害者権利運動の歴史や現在の課題なども伺うのだそう。
そのあと各自インターン先に配属されるのですが、インターンシップの期間、一人ひとりのインターン生にメンターがつき、アドバイスももらえる仕組みになってります。
インターン修了生の多くは障害者関連の団体、または政府関連機関で現在働いています。
AAPDがこのインターンシップから期待していることは2つ。
1つ目は、障害者本人が他の障害者と接したり、助ける機会を得ることで自分のアイデンティティを見つけること。
特に若い世代の障害者は生まれた時から地域で生活し、健常者と同じ環境で教育を受ける環境が整っています。
それは同時に家族や地域で自分1人が障害者というケースも多く、自分のアイデンティティを見つけにくい環境にもなっているのです。
2つ目は、雇用主が障害者と実際に働く機会を得ることで、ステレオタイプや偏見を減らすことができること。
これは将来的に障害者の能力をみて採用する雇用主を増やすことにもつながっていきます。
障害者学生のインターンシップについては、以前シラキュース大学の取り組み(*1)とボストンの自立生活センターでの取り組み(*2)をこのブログで紹介しました。
社会に出る前に仕事をするということは、ただ単に仕事の経験を得るだけでなく、自分の得意・不得意に気づいたり、新しい環境へ適応する能力や、新しい人とのコミュニケーション能力を身につけることもできます。
障害者と雇用主のマッチングを成功させるには、障害者本人が自分自身についてもっと知ること、そしてキャリアについてもっと考えることが必要。
インターンシップの機会はそのような重要な役割も果たしてくれます。
またAAPDはDisability Mentoring Day(障害メンタリング・デー)という、各地域の障害者団体と協力して、障害者学生や休職中の障害者と元のビジネスとつなげる活動にも協力しています。
例えば金融大手のゴールドマンサックスはこのDisability Mentoring Dayを活用して、優秀な能力のある障害者を探しているのだそう。
またUS Business Leadership Network (USBLN)と協働して、Disability Equality Indexという調査もしています。
これは雇用主に対して面接・合理的配慮・企業文化などのアンケートをとり、その企業の労働環境がどれくらいインクルーシブかを評価するもの。
80%以上を獲得した企業は社名が公表され、多様な人材が働きやすい会社だと知らせることができます。
今年、第2回目のレポートがリリースされましたが、今後さらに参加企業を増やしてより多くの会社がインクルーシブな職場づくりに力を入れて欲しいと考えています。
この取材から、AAPDは障害者と雇用主をつなぐ重要な役割を果たしていることを知りました。
彼らは障害者をサポートするだけでなく、雇用主にも障害者との接点を作り、また障害者も働きやすい職場を整える施策も実施しています。
障害者が理想の企業に直接アプローチしていくこと、また雇用主が能力のある障害者を探してアプローチすることは簡単なことではありません。
AAPDのこれらの取り組みがあることで、障害者は自信と経験、スキルを得る事ができ、雇用主は必要をする人材を探すことができます。
両者ともベネフィットが得ることができるというのは一番理想的なことですね。
最後に・・・6月にこのブログで日本の障害者雇用に関する動画を紹介しましたが(*3)、その動画を制作してくださったRooted in Rightsの取り組みが、AAPD主催の「ADA celebration」というイベントにて表彰されました。
このニュースを聞いたとき、AAPDはアメリカの障害者団体たちをつなぐ役割も担っているのだなと感じました。
1人または1つの団体だけでは社会を変えていくことは難しいですが、横の繋がりを強くすることでより大きな力を持つことができます。
AAPDは人や団体をボジティブな方法で結ぎながら、社会を前進させていると実感しました。
*1 シラキュース大学の障害学生向けのインターンシッププログラムについてはコチラ
*2 ボストンの自立生活センターでもインターンシッププログラムを実施しています
*3 Rooted in Rightsと協働制作した動画についてはコチラ