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アメリカには雇用機会均等委員会(U.S. Equal Employment Opportunity Commission=以下、EEOC)が設置されており、全米に53のオフィスがあります。
ここでは連邦法に基づいて、求職者や従業員に対する人種、肌の色、宗教、性別、出身、年齢 (40歳以上)、障害、遺伝情報などの差別行為を見張っています。
もし雇用主から何らかの差別を受けた場合、最寄りのEEOCオフィスに申し出ることで彼らがその事実調査をし、場合によっては訴訟を起こすこともできます。
EEOC本部はワシントンDCにあるということを知り、私はそちらに所属されている弁護士のPeggy Mastroianni氏を取材させていただきました。
Peggy氏がコーネル大学を卒業したのは1961年のこと。
当時、女性の一般的な就職先といえば、教員または秘書のような仕事しかなかったといいます。
彼女は教員の道に進み、その後、結婚・出産を経て専業主婦になりました。
最初の子どもを授かった1970年は、女性の活動運動も盛んに行われていた時期。
あるとき、友人から女性の地位向上を目指すグループ活動に誘われました。
そこでは女性に関する様々な社会問題が話し合われており、Peggy氏はあるメンバーから経済的に自立することを勧められました。
それが転機となりニューヨークのロースクールに入学。当時、200名の学生の中に女性は30名だけだったそうです。
卒業後、ご主人の仕事の関係でアトランタへ引っ越し、Peggy氏はそこで仕事を探すことに。
しかし当時は女性が法律関係の職に就くことは簡単ではありませんでした。
彼女は「アメリカ自由人権協会」で無償で働きながら、陪審の仕事もプロボノで引き受けていました。
(当時、黒人は陪審の仕事をすることができなかったそうです)
それが彼女が公民権と関わったきっかけでした。
「アメリカでは障害者の権利は公民権と考えられています。
EEOCでの仕事を選んだのは、ここが唯一自分のしたい仕事ができる場所だったから。
仕事をするということは人生のすべてのキーになります。
収入を得て自立するだけでなく、自分に自信がついたり自分の価値を見るけることもできます。」
彼女が取材中、何度も繰り返し言われていたのは、「Law with muscle」というワードでした。
直訳すると「筋肉のついた法律」ですが、これはただ単に法律を作るだけでなくきちんと使われている(筋肉のように鍛えられている)ことが重要という意味。
「たくさんの法律を持っている国であっても、実際にその法律が使われるよう強化できていない国もあります。
アメリカでは、もし法に反する障害者差別があれば、EEOCと被害者が訴えることができます。
だから、企業側も訴えられないよう雇用差別法にとても注意を払っています。
個人レベルでは差別行為を証明することが難しいこともありますが、EEOCや他の政府機関はさらに細かい部分まで調査できるパワーを持っていますから。」
日本にも障害者の権利を守る法律はたくさんありますが、実際の社会では不便な場所も多く、就職のシーンでも差別はまだまだ存在します。
ただ文化的に法律の使われ方はアメリカと日本は大きく異なります。
アメリカは訴訟大国とも言われるほど、訴えを起こすことはより一般的。
日本は個々人の権利を主張するよりも全体の協調性を重視するので、アメリカに比べて誰かを訴えるということは少ないですね。
次に障害者雇用にフォーカスして話を進めました。
日本には障害者雇用の法定雇用率というのが定められています。
一般企業で50名以上従業員がいるところは最低2%の障害者を雇用しなければならないということが法律で決められているのです。
アメリカには法定雇用率はないのですが、政府と契約のある企業は “目標値”として障害者雇用7%を掲げています。
「一般企業を障害者を雇用しようという目線に変えるには、まず政府がその良いモデルにならければいけないと考えています。
そして、その次に政府と契約のある企業が良いモデルになること。
障害者をただ雇用するだけでなく、”仕事”ができる環境があり、能力や経験によって健常者と同じく昇進の機会が与えれられる環境がなければいけまん。
そのような環境を政府機関と契約のある企業が見せることで、その他の一般企業に”私たちも障害者雇用できるんじゃない?”と思わせることができます。」
と、Peggy氏。
EEOCではアメリカ政府機関に対して、12%の障害者雇用目標値を設定しています。
今回の訪問だけでも、国務省・労働省・保健福祉省で仕事をしている障害者の方にもお会いすることができ、中には役職に就いている方もいました。
先日は聴覚障害者で初めてホワイトハウスのレセプショニストに採用されたLeah Katz-Hernandez氏の動画も話題になっていました。
以下の記事から是非チェックしてみてください!
http://www.huffingtonpost.com/entry/leah-katz-hernandez-rotus_us_579fa0cce4b0693164c21f5f
日本では人と接する職に障害者が就くことはまだ珍しい環境がありますが、
日本の政府レベルでこのような雇用をしてくれると良い影響を民間企業にも与えることができますね。
またホワイトハウスでは障害者学生のJames Dennehy氏がインターンとして働いています。
彼は腕がなく足で文字を書いています。
https://www.instagram.com/p/BIflRDnj-uZ/
「政府と契約のある企業」という言葉を聞きいたとき、シアトルで訪問したスターバックスを思い出しました。
7%という目標値ができたことで、障害者の能力を評価する新しい採用方法を導入されていたのです。
また各店舗で障害のあるパートナー(=従業員)が仕事をしており、その様子は毎日のようにSNSで見かけます。
スターバックスのような政府と契約のある企業の取り組みも確実にポジティブな影響を与えているはずです。
(スターバックス取材記事はこの記事の最後にリンクしています)
Peggy氏は最後にこんな事をおっしゃっていました。
「障害の種類によって得意な分野は異なります。
なので、障害者と一括りにするのではなく、その人が何に興味があり、何ができるのかしっかりと見極めることが重要です。
企業は障害者を安全な場所に置いてただ守るのではなく、どうすればその人の能力を発揮できるかを考えて仕事をつくり出さなければいけません。
1つの企業がそれを始めることで、ほかの企業にも影響を与えられます。
企業同士の方が情報交換することも多いですからね。」
日本でもまだ少数派ではありますが、障害者採用を一般採用とまったく同じ入り口にしていたり、
入り口は分けていても、オープンポジションにして面接で本人と話をしてから所属先を決めるという会社も出てきています。
このような企業が増えれば、他の企業も障害者採用のプロセスを見直し、より平等な評価・審査する動きへ変わってくるでしょう。
また採用された障害者が積極的にプロフェッショナルに活躍をしていくこともとても重要ですね。
このような企業と障害者が増えることで、障害者雇用が特別に分けられた採用方法ではなくなり、結果的に両者にとってメリットのある雇用関係を生むことができるはずです。
*スターバックスでの取材は全4回に分けて 掲載しています。