This article is also available in: English
エド・ロバーツはカリフォルニ大学バークレー校で初めて入学を許可された重度障害者です。
また、1970年代にバークレーで始まった障害者自立運動を指揮した1人でもあります。
社会活動家として、アメリカの障害者の生活を変えるサポートをしてきました。
そんな彼が1995年前に亡くなった時、多くの人から「エド・ロバーツの活動を記憶に残すために彼の名前をバークレーの建物に付けよう」という声があがりました。
ADA(Americans with Disabilities Act = 障害を持つアメリカ人法)ができて5年しか経っていなかった当時、様々な障害者がバリアなくアクセスできる建物はありませんでした。
障害者がアクセスできる環境を作ることは、エド・ロバーツが生前期に力を注いだテーマの1つだったこともあり、
障害者団体などが10年以上かけて資金を集め、誰もがアクセスできる「エド・ロバーツ・キャンパス」が完成したのです。
今回を案内してくださったのは、エド・ロバーツ・キャンパスのボードメンバー、Susan Hendersonさん。
Disability Rights Education and Defense Fund (障害者権利教育擁護基金 )のExecutive Directorでもあります。
障害者権利教育擁護基金はエド・ロバーツ・キャンパス内にオフィスがあり、この団体を含めて7つの団体がはいっています。
建物の外観。正面の壁はまっすぐではなく、少しカーブして弧を描いています。
これは「どんな人も歓迎する」という意味を込められているそう。
日本でよく見かける視覚障害者への点字ブロック、実はアメリカではあまり見かけません。
エド・ロバーツ・キャンパスの入口にも点字ブロックはありません。
というのは、点字ブロックは車イスユーザーにとってちょっと厄介者。
ブロックの上は車イスのタイヤがガタガタ揺れ、車イスで進みにくいのです。
エド・ロバーツ・キャンパスを設計する際、視覚障害者に入り口までの道をわかりやすくするよう花壇を置くか?
という話もあったそうですが、それもまた車イスで移動できるスペースを少なくしてしまう・・・
ということになり、最終的に採用されたのがこちら。
2種類の違う素材のタイルを使用し、白杖で触れた時の感覚の違いでエントランスまで誘導できるものにしたのです。
またタイルの色も違うので、弱視の人も色の区別でエントランスまで行きやすいようになっています。
エドロバーツ・キャンパスは公共交通機関でのアクセスも大変便利。
Bartという高速鉄道のAshby駅から地下で直結しています。
エレベーターで地上に出てきてもすぐエントランスにアクセスできます。
ちなみに、Bartはベイエリアを走る高速鉄道。
ホームと電車の間に段差がないので、車イス1人で乗り降りが簡単にできます。
また、エントランスを出て道路を渡ったところにバス停もあります。
建物の中に入ると、象徴的な赤い螺旋スロープが現れます。
このスロープで2階にアクセス可能。
スロープの幅は車イス2台が横に並んでも移動できる十分な広さです。
緩やかな坂に設計されていて、一定間隔でフラットになっている場所があります。
手動車イスを自分で移動する人、また車イスを押す介助者にとっても優しい作りです。
またスロープの横には手すりも付いており、視覚障害の方がスロープを安全に上り下りすることができます。
また歩く事ができる人でも、手すりがあった方が歩きやすい高齢者なども安心して利用できます。
壁にあるのは1977年にサンフランシスコとワシントンDCで撮影された障害者運動の写真です。
当時の音声や映像もセンター内で視聴することができます。
スロープ以外にも、エレベーターと階段を使ってフロアを行き来することができます。
複数の選択肢があるのはとても嬉しいですね。
このエレベーターは乗る際に前方ドアが開き、降りる時に後方のドアが開くという作り。
こうすることで、車イスユーザーが前向きにエレベーター内に入り、方向転換せずまっすぐ前進して降りることができるようになっています。
乗る際も降りる際も同じドアが開くと、エレベーター内で車イスを360度回転する必要があります。
このエレベーターは大きめではありますが、車イスが2台以上いっしょに乗ってしまうと
それぞれが回転するのにスペースも必要になり大変なのです。
ここのエレベーターで面白いと思ったのは足元にあるボタン。
日本のエレベーターでも、車イスの人が届きやすい低めの位置に設置されているのはよく見かけます。
エド・ロバーツ・キャンパスのエレベーターにも同じようなボタンがありますが、これらは手が自由に使える車イスユーザーには便利なもの。
しかし車イスユーザーの中には手に障害がある人もいて、彼らにとっては低い位置のボタンを押す事も難しいのです。
この足元のボタンは、車イスで押すタイプなんですね。
手に障害がある人は電動車イスに乗っているケースが多いです。
電動車イスを操作してこのボタンを押し、エレベーターが利用できるようになっているというわけです。
後半に続く・・・
Pingback: これがユニバーサルデザインだ!エド・ロバーツ・キャンパス訪問 ~後編~ / This Is Universal Design! Visited Ed Roberts Campus ~Part 2~ – Moon Rider 7 Project